連休の合間の5月6日、浦河ひがし町診療所のデイケアにメンバーが集まりました。
それまで寒い日がつづいたけれど、この日は晴れて暖かい。午後は花見に出かけることにしました。
浦河の桜といえば、観光施設アエルの桜並木が定番です。そこに行きたいという人と、ほかを見たいという人と、2つのグループに分かれました。

第2グループが出かけたのは浦河の隣、様似町です。
海岸から数キロ入った山間にダムがあり、そのあたりが桜の名所でした。
名所といっても絵葉書になるほどではありません。ところどころに山桜が何本か咲いているくらい。エゾヤマザクラはもう散って葉っぱでした。いろいろな桜があり、いっぺんにぜんぶは見られないけれど時期によってあっちが咲いたりこっちが咲いたり。はなやかさはなくても山の風景の落ち着きがあります。

この日出かけたメンバーのなかに鈴木恵美子さんもいました。
垂れ下がった桜の枝を見て、これもらっていいか、と聞いています。折っちゃだめだよといわれ、ああそう、とすなおに手を引っ込めていました。
ぼくが桜を撮っていると、「エミリーも撮ってね」といいます。それで何枚か撮りましたが、カメラを向けるとかならずVサインのポーズになります。ちょっと別な姿も撮りたいなあと思いました。

あとで気づきました。
恵美子さんはときどき、自分のことをエミリーといいます。だいたい機嫌のいいとき。この日もみんなといっしょに花見に出て、気分がよかったのでしょう。
帰りがけに、海沿いの高台にある観音山公園にも寄りました。
カタクリとエンレイソウの群落があります。様似ダムにいるときもこの遊歩道を歩いているときも、恵美子さんはずっと、えへへ、えへへと笑っていました。
知らない人が見ると、この人なんか変じゃないかと思うでしょう。でもいつもいっしょにいると、それがただの息づかいのように自然なものになります。

明るい雑木林を、みんなでゆっくり歩く。
こんな平和な日が来るなんて、3年前には誰も想像もできなかったんじゃないかな。
いっとき、ぼくの頭にはそんな思いが浮かびました。
(2022年5月7日)