欲望の五輪

 オリンピックは、「白人男性のスポーツの祭典」としてはじまったのだと思います。でもいまはもう巨大な金もうけのしくみになっている。もちろんもうけガシラはIOC、国際オリンピック委員会。その欲望の舞台の上でアスリートが踊らされているとしか見えません。

 16日の朝日の記事に、そのことをあらためて感じました。
 コロナ下の開催だから、せめて開会式などは簡素な形にできないかと日本側が提案したら、IOCは「多額の放映権料を支払う米テレビ局との契約」をちらつかせ、日本は「違約金が払えるのか」と迫ってきたとか。
 小さなエピソードが、全体の構図を象徴しています。

IOCのバッハ会長 (Pixabay)

 開会式がパッとしなかったら、テレビは視聴率が取れない、放映権を持つ米NBC系列とIOCが、なんでもいいから派手で見栄えのする開会式にしろ、といっていいるわけです。
 大きな悪者が、小さな悪者を脅してるような。

 欲望のオリンピック。そこで金メダルを取るのはIOCだ、とワシントン・ポスト紙のコラムはいっています(Holding the Tokyo Olympics amid the covid pandemic threat is about corporate revenue, not the athletes. July 11, 2021, The Washington Post)。

 IOCには、オリンピックの放映権料が2032年までに8千億円も入ってくる。濡れ手に粟なんてもんじゃないですね。それで会長以下、王侯貴族のような暮らしをしている。日本のコロナ禍なんかまったく念頭にないんじゃないか。まぎれもない「欲望種目」の金メダル。

 でもその放映権料を払うアメリカ・NBC系列は、コマーシャルの売り上げなどでそれを上回る収入があるはず。だから「欲望種目」では銀メダル。
 で、銅メダルは?
 ポスト紙のコラムは、「日本でオリンピックを進める人たち」としている。
 どうかなあ。オリンピックで日本が投資以上に金もうけできるなんてことはないから、ここは留保があるのですが、「欲望」を金銭にかぎらず権力欲もふくめるなら「銅メダル」といってもいいんでしょう。なにしろオリンピックを選挙対策、政権浮揚のために使おうとしている人たちがたくさんいるから。

 コラムはいいます。
 IOC、NBC系列、そして日本の推進者たち、彼らは日本の人びとに大禍をもたらそうとしている。来年に延ばせばいいのになぜ強行するのか。すべてはカネのため。そこには人間性のかけらも見られない。
(2021年7月16日)