汚れたオリンピック

 来年2月、北京で開かれる冬季オリンピックを、アメリカが「政治ボイコット」すると発表しました。中国の人権抑圧に抗議する形で(No U.S. government official will attend Beijing Winter Olympics, White House announces. December 6, 2021, The Washington Post)。
 アメリカ政府はことし3月、中国が新疆ウイグル自治区の少数民族、イスラム教徒のジェノサイド(民族虐殺)を進めていると断定しています。カナダやイギリス、EUとならんで。

ホワイトハウス

 ニューヨーク・タイムズやBBCは、中国がウイグル族を100万単位で強制収容所に送り、女性に不妊手術を強制し、子どもを親から引き離し、ウイグルの文化と言語、宗教の抹殺を図っていると伝えてきました。
 もちろん中国は全部ウソだと否定しています。でも人権活動家やジャーナリストが現地に入れない以上、中国政府の反論には説得力がない。

 ウイグルだけではありません。チベット、香港、台湾への脅威。国内の人権活動家、「ミートゥー」の女性たちの声も消し去ろうとしている。このような国の祭典につらなることはできないというのがバイデン政権の決定でした。

ウイグルの”民族旗”
(旧東トルキスタン国旗)

 この政治ボイコットによって、アメリカの選手は競技に参加できるけれど、大統領をはじめとする政治家、外交官はいっさい北京に行かないことになります。

 中国の国威発揚に使われるオリンピック、IOCの貪欲な金もうけに使われるオリンピック。
 その中国とIOCは、テニスのペンシューアイ選手が中国共産党幹部の性的暴行を告発したとき、ともに連携して彼女の声を封じています。北京冬季オリンピックが少しでも揺らぐことのないように。

2008年の北京五輪会場

 さて、ところで。
 たまたまこの時期、北海道にいて気がつきました。
 札幌市が、2030年冬季オリンピックの誘致を進めているんですね。
 オリンピックは「人種や性別、国籍の垣根を超えた人々の思いを一つに束ねることのできる世界最大級のイベント」、だから札幌でも開きたい、といっています。

 オリンピックって、「人々の思いを一つに束ねる」イベントなんでしょうか。
 競技する選手たちはいい。でも彼らを利用するオリンピックというしくみは、政治とカネに汚れきっているとしか思えません。少数民族や人権を奪われた人びとがいないところで「思いを一つに束ねる」イベントって、何なんでしょうか。
 札幌の人びとは、北海道の人びとは、北京オリンピックをどんなふうに見るのでしょう。
(2021年12月7日)