注射を見せるな

 ついにこんなことまでいうの? 笑って驚きました。
 テレビに予防注射の映像を出すなというのです。あの痛そうなシーンを見せるから、ワクチンをしない人が増えるのだと。
 ワシントン・ポストに載った、マイケル・ベンソンという作家の主張です(A plea to the news media: Please stop showing shots of vaccine shots. By Michael Benson. Jan. 11, 2022, The Washington Post)。

 ワクチンへの反対が強いアメリカでは、いまだに4人に1人がワクチンを接種していません。だから1日百万人ものコロナ感染者が出ている。日本とは桁違いです。この状態をなんとかしようと、アメやらムチやらさまざまな手を打っているけれど、科学不信、ワクチン陰謀論者が多くていっこうに事態は変わらない。そういうなかでの意見です。

 ベンソンさんはいいます。
 テレビにくり返し注射のシーンが出てくる。あの、腕に注射針が刺さるところを見ると、思わず「痛い!」と目をそむけてしまう。みなさんもおなじでしょ。注射される人だって、目をそむけてるじゃないですか。いやなんですよ、あんなの見るの。
 そういう映像をメディアが出しつづけるから、ワクチンへの拒否感が強まるんです。コロナワクチンを進めるために、メディアのみなさん、どうかあの映像を控えてください。

 ベンソンさん自身はワクチンの効果を信じているし、真っ先に接種を受け、3回目の追加接種もすませたといいます。コロナは政府の陰謀だなんて思っていない。でも多くの人は、針を刺されることへの恐怖感を持っている。そこにちょっと配慮して、恐怖感や不安をやわらげる方法をもっと考えた方がいいんじゃないかと、いくらかユーモアをこめながらいいます。しかもそこで興味深い事実を指摘している。
 赤ちゃんだって、注射のとき、砂糖をあげると安心するんだし。

 え? 乳児の予防接種時に砂糖?
 調べてみたら、ほんとにそういう学術論文がありました。コクラン・ライブラリーという、イギリスのデータベースに収録された2016年7月15日付の小児科医らの論文です。
 乳児に口からスプーンで砂糖液を与えると、その直後に注射してもあまり泣かないし、いやがらない、らしい。

 そんな方法があったんだ。
 こんど追加接種を受けるときは、問診票を記入したらチョコレートをひとつくれる、なんてことにならないだろうか。
(2022年1月12日)