英語のきらいな人には、あらかじめごめんなさいといっておきます。
OED、オクスフォード英語辞典が選んだ「ことしのことば」は、ヴァクス(vax」でした。ワクチン。ことし、もっともインパクトのあることばだったそうです(Vax declared Oxford English Dictionary’s word of the year. November 1, 2021, BBC)。

ヴァクスは、具体的には名詞(vax、ワクチン)でもあり動詞(vax、ワクチンを接種する)でもあり、また多くの派生語をうんでいる。派生語の例としてOEDは、こんなのをあげています。
ヴァクシー(vaxxie)。ワクチンを受けた人が接種される自分の写真をネットにアップしたもの。セルフィーからの造語でしょう。
アンチ・ヴァックス(anti-vax)。ワクチン反対の、という形容詞。
ダブル・ヴァクスト(double-vaxxed)。2回接種を受けた、という形容詞。

OED編集部によれば、ヴァクス(vax)は1980年代にできたことばで、コロナ以前はほとんど使われなかった。この1年でパンデミック(pandemic)とともに急増したそうです。
ついでに、過去のことばについて。
去年OEDは「ことしのことば」を決めませんでした。あまりにも多すぎたので。たとえばロックダウン(lockdown)、山火事(bushfires)、コロナ(Covid-19)、ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)などなど。自宅勤務(WFH [working from home])とかエッセンシャル・ワーカー(keyworkers)なんてのもありましたし。

さらにさかのぼると。
2019年、climate emergency、気候危機。
2018年、toxic、有毒な。日本語でいえばブラックでしょうか。toxic workplaceなど。
2017年、youthquake、若者が社会変動を生み出す現象。
2016年、post-truth、旧来の「真実」がねじ曲げられる時代の相。
いずれもただの流行じゃなく、社会の「いま」の反映。それをイギリス的感性で捉えている。日本の流行語大賞とは色合いがちがいますね。
(2021年11月2日)