久しぶりに渋谷に行きました。
原義和さんの映画「夜明け前のうた」の試写会です。
会場は渋谷の東急本店近く、ユーロシアターというミニシアターの草分けみたいな映画館の、そのさらに下にある映画美学校というところの試写室でした。映画批評家やライターらしき人たちが20人あまりいたでしょうか。暗い部屋の大スクリーンで、1時間37分の映像をハイ・クォリティのプロジェクターとスピーカーで楽しみました。
映画のテーマは、かつて精神障害者を自宅に閉じこめた「私宅監置」。もちろん単純な記録、告発ではありません。社会的弱者が「見えない存在」にされるということ、それがいまの時代にもつづいていることがほんとうのテーマとして浮きあがります。

本来は重くて暗い話。でもこの映画はかならずしもそうではない。沖縄の青い空と海、打ち寄せる波のゆったりと流れる時間のなかで、映像が闇のなかの光、霊的な悲哀にまでいたります。公開版は編集段階にはなかった完成度がありました。

試写会のおかげで、渋谷の街を歩きました。
先週も代官山まで行きましたが、妻が混んだ渋谷駅で乗り換えるのはいやだというので路線を変更し、渋谷ではなく自由が丘経由で行きました。きょうはひとりで、感染が広がる東京のもっとも密な渋谷の街を歩いたわけです。なんて無謀なといわれるかもしれない。その年で渋谷とは。
でもイメージと実際はちがいます。電車は密ではなく、行きも帰りも座れました。
渋谷駅前のスクランブル交差点は、信号が1回変わるごとに多いときには3千人の歩行者が渡るといいます。きょうは、せいぜい100人程度。これなら歩道を歩いていてコロナに感染する確率はかぎりなくゼロに近い。
でもゼロではない。
そのことを気にする人はけっこういます。その心配は尊重しなければいけません。
ぼくは試写会に行く程度の危険は気にしないことにしています。
(2021年1月13日)