そうかあ、最後はやっぱりここに来ないとダメなのかぁー。
と、ため息が出ます。
地球温暖化を止めるには、大気中の炭素を回収し、地下深くに埋めなければならない。でないと温暖化は進む一方、猛暑、山火事、洪水や干ばつはひどくなるだけだというのですね。
ほんとにそこまでしなければならないのか。とまどいますが、ハーバード大学のデビッド・キース教授の主張は明快です(What’s the Least Bad Way to Cool the Planet? By David Keith, Oct. 1, 2021, The New York Times)。

地球温暖化のいちばんの原因は、大気中の二酸化炭素が増えすぎたこと。
国連は、2050年までに二酸化炭素の排出をゼロにしようといっている。キース教授は、この目標は達成できるかもしれないが、その間にも事態は悪化するといいます。
「二酸化炭素の排出をゼロにする」のではなく、「いまある二酸化炭素を減らす」ようにしなければならない。
物理学者でもあるキース博士は、温暖化への積極的な対処法が2つあるといいます。
ひとつは地球工学的な方法。これは地球表面をできるだけ白くして太陽光を反射し、気温上昇を防ぐ方法です。こまかい硫酸を成層圏に散布し、白い雲をできるだけ広げる、などのアイデアがあります。けれどこれは短期的、対症療法的になってしまう。

もうひとつは、炭素回収法。大気中の二酸化炭素から炭素を取り出して地下に埋めます。実験的な工場を稼働させて、技術的には可能とわかっている。1平方マイルの広さの工場は、年に百万トンの炭素を大気から除去できます。
しかし、ですよ。
途方もない資金や設備が必要です。
今世紀半ばまでに地球の気温を1度下げるためには、数兆トンの炭素を除去しなければならない。そのための設備を地球規模でつくるなら、いまの「全鉱業より大きく、全建設業より小さい」規模になるだろうといいます。それだけの規模の工場群を、世界中につくらなければならない。気が遠くなりますね。

炭素の排出を止め、温暖化を止めるためには「すみやかな行動」を取らなければならない、それが「気候正義」だとキース博士はいいます。
正義、なんていわれるとちょっと引いてしまうけれど、この場合の正義は相手に何かを求めるのではなく、こちらが自分をどう律するかということでしょう。それはまた、ぼくらはこれまで考えたこともないことを、これからは多少なりとも考えなきゃいけない、ということなんだろうと思います。
(2021年10月3日)