皇帝ペンギンの運命

 地球温暖化で、皇帝ペンギンはやがて全滅する。
 こんな恐ろしげなニュースが伝わってきました(Virtually all emperor penguins doomed for extinction by 2100 as climate change looms, study finds. Aug. 3, 2021, The Washington Post)。

 記事によると、ペンギンのなかでは最も大型の皇帝ペンギンは、地球温暖化がこのまま進めば、30年後には3分の1にまで減り、今世紀末には事実上絶滅するだろうということです。
「グローバル・チェンジ・バイオロジー」という専門誌に掲載された論文を、ワシントン・ポストが伝えました。
 ペンギンがいなくなった地球なんて、とてもさびしいですね。

皇帝ペンギンの親子

 皇帝ペンギンは身長1メートル以上、体重も20から40キロになる大型鳥類です。2020年の調査では世界で28万組のペアがいると推定され、ほとんどが南極大陸周辺の棚氷を生息地としています。
 棚氷の上で繁殖し、子どもを育て、そこから海に潜って食料を探す。シャチなどの外敵に追われたら棚氷に逃げて身を守るというぐあいに、棚氷を生命線とする動物です。その棚氷が、温暖化の影響でどんどん縮小している。

 南極大陸のウェッデル海というところでは、棚氷が過去30年で60%も減り、皇帝ペンギンの繁殖地のひとつが2016年に消滅しました。このとき1万羽の子どもペンギンが死亡したと推定されています。
 こうしたことから、アメリカ野生生物局は皇帝ペンギンを絶滅危惧種に指定しました。
 アメリカの領内には、アラスカをふくめてペンギンはいないから、絶滅危惧種に指定してもできることはかぎられますが、警鐘を鳴らすことにはなるでしょう。担当者のひとりは「ペンギンは、(鉱夫の)カナリアの現代版だ」といっています。
 皇帝ペンギンのようすを見れば、地球がどこまで危なくなったかわかるというのでしょう。

 余談ですが、ペンギンって、北半球にもいたんですね。ヨーロッパ人が乱獲し、19世紀なかばに絶滅しています。
 動物学者のファーレイ・モーワットが『虐殺の海 Sea of Slaugher』という本で、“北半球のペンギン”がいかにして絶滅させられたかを詳述しています。脂を燃料にし、卵を食料にするために獲りつくされ、地上から消えてしまった。若いころにそれを読んで、先人たちはなんとひどいことをしたのかと、ため息をついたことを覚えています。
 22世紀の人たちもまた、ぼくらにため息をつくのでしょうか。
 どうせ生きてないからどうでもいいとは思いたくありません。
(2021年8月8日)