浦河ひがし町診療所のみなさんが、日本統合失調症学会の市民公開講座に参加しました。
きわめて楽しく有意義な講座だったのですが、その内容を伝えることができません。
なぜならそれが公開とは名ばかりの“秘密講座”だったからです。
講座そのものは、よく考えられた企画でした。
大学の精神科の教授が2名、東京の当事者1名と、浦河ひがし町診療所のみなさんが参加し、それぞれに統合失調症の話をして病気への理解を進めようとしています。
ぼくはこの講座にリモートで参加し、2時間半にわたって視聴しました。
けれどその内容を伝えることができません。学会が禁止しているのです。

講座の「撮影、録音、録画等」が禁止されるのは、いまの日本社会ではしかたがありません。しかし違反したら「発覚次第、著作権・肖像権侵害として対処させていただく」とあるのは、やや強圧的です。
それより唖然としたのは、講座の内容を外部に漏らしてはならないとした次の文言です。
「本講座で知り得た個人や地域のプライバシーに関わる 情報について、個人や地域が特定されない形であっても、視聴者以外の者への漏洩や、一切のソーシャルネットワークへの書き込み等は固くお断りします。」
講座の内容を他人に漏らすこと、ブログやツイッターなんかに出すのは厳禁、なのです。
個人や地域が特定されない形であっても。
ここまでの情報管理、情報統制は異様です。
そして暗い気分で思いついたものです。これは配慮という名の暴力ではないか。
厳しい管理統制で、守っているはずのものを抑えつけ、大事なものを奪っている。
精神障害者が顔を見せ、名を名乗り、自らの病気を語りつつ地域に出ようとしてきた浦河の40年の、逆を行く動きです。
ここでは、当事者の苦労が奪われている。

(3月21日、グループホーム・すみれⅢ)
講座の内容が予想外によかっただけに、学会の情報統制は理不尽だとの思いがつのります。
でもその後すぐ、ひがし町診療所の人たちから聞きました。
講座の後、みんなでおはぎを食べて打ち上げをしました、とても楽しかった、と。そういえばこの日はお彼岸でしたね。川村敏明先生は足の手術がすんで元気です、とも。
ロシアみたいな情報統制にうんざりしていたぼくは、浦河の話を聞いて、なげいてもつまらない、楽しまなきゃと思い直しました。
(2022年3月22日)