結婚式取りやめ

 オミクロンが流行っているので、結婚式はやめます。
 そういう不運な人があちこちにいるでしょう。そのひとりがジャシンダ・アーダーンさん、ニュージーランドの首相です。

ジャシンダ・アーダーン首相
(Credit: Newzild, Openverse)

 ニュージーランドでは先月、家族で旅行した9人がコロナのオミクロン株に感染しました。飛行機の乗務員も感染しています。オミクロン株のさらなる広がりを防ぐために、アーダーン首相は23日、100人以上の集まりを禁止するなど、新たな感染防止策を発表しました。
 この記者会見のなかで、自分の結婚式も中止するとのべました。
「コロナでおなじような経験をしている人たちがほかにもいます。だから私もその仲間になります」
 国民に自制を求めながら自分はこっそり宴会を楽む、なんてことはしません。

 41歳のアーダーン首相には、長年連れそったパートナーのクラーク・ゲイフォードさんがいます。二人のあいだには4年前に子どもが生まれ、アーダーン首相はその子を育てながら首相としての執務をこなしてきました。子どもが3か月のとき、いっしょにニューヨークの国連総会に出席し世界の称賛を浴びています。近くゲイフォードさんと結婚式をあげる予定だったのが、あっさり取りやめたということです。
「人生、ままなりませんよね」

記者会見(1月23日)
(本人のフェイスブックから)

 さて、ところで。
 一国の首相の結婚式が中止になったというのに、ワシントン・ポストの記事は驚くほど短くあっさりしたものでした(New Zealand Prime Minister Jacinda Ardern cancels her wedding amid omicron outbreak. Jan. 23, 2022, The Washington Post)。

 首相だろうが大臣だろうが、公人といっても結婚は私事、根掘り葉掘りするものではない。そういう常識があるのでしょう。しかも相手がジャシンダ・アーダーンなら、「そっとしておくか」という気持ちがメディアの側にもあるのではないか。

 アーダーン首相は、もっとも国民に好かれている政治家のひとりです。
 41歳、女性、リベラル、自由婚。天災があっても人災があっても、渦中の人びとへの共感を失なわない。2019年、クライストチャーチのモスクで50人もが殺害されたテロ事件で、真っ先に現場に駆けつけ悲嘆にくれるムスリムの女性たちを抱きしめた。その反応、そのときのスカーフ姿が、彼女の人柄を物語っていました。

(Credit: Kirk Hargreaves, Openverse)

 彼女の熱烈なファンは、ファーストネームをもじって「ジャシンダマニア」と呼ばれるらしい。ファンクラブができたら入りたいところです。
(2022年1月25日)