若者が怒る国で

 ソカクだ、センキョだ、と騒いでいる国では、あいかわらずエラそうなオッサンたちが跋扈しています。そんな政治は、新聞を読む気も起こらない(それじゃいけないとは思いますが)。
 そんなことより、記録しておきたいドイツの新しい議会。
 9月に行われた選挙で、若者が政治を変えました。遠い国のことだけど、これは新聞を読む気になります(Skateboards, Climate Change and Freedom: Germany’s Next-Generation Parliament. Oct. 3, 2021, The New York Times)。

 新しくドイツ連邦議会の議員になったのは735人。
 選挙の政治的な分析はともかく、ドイツ史上もっとも“若い議会”が誕生しました。
 最年少は23歳のエミリア・フェスターさん、まだ学生です。議会にはスケボーで通勤するといいます。自転車マニアのマックス・ルックスさんは24歳、フェミニストのリア・シュローダーさんは29歳、そういう若者たちが国会議員になりました。
 議員の平均年齢は48歳です(日本の国会議員の平均年齢は約55歳。20代の議員はひとりもいません)。

エミリア・フェスター議員(緑の党、23歳)
(本人のインスタグラムから)

 社会学者のクラウス・フレルマンさんはいいます。
「ドイツはかつてない世代間の亀裂、両極化を抱えている。30歳以下と、対する50歳以上の世代、このあいだの亀裂だ。変化を求める若者たちは、2つの政党に投票した」
 2つの政党とは、緑の党と自由民主党です。こんどの選挙で第3党と第4党になりました。
 若者たちがこの2党に投票したのは、ともに変化を訴える党だったから。古い世代は自分たちの声を聞かないと怒ったから。
 古い世代は地球温暖化を看過し、自分たちの未来を奪った。彼らが求めたのは、古い世代からの自由でした。

ドイツ連邦議会

 緑の党と自由民主党は、いまや連立工作でキャスチング・ボートを握っています。その実際の連立工作のもようが、既存メディアではなくSNSで伝えられることに、多くのドイツ国民は時代の変化を感じっています。

 自由民主党の、29歳のリア・シュローダー議長はいいます。
「私たちは、この国を未来へと導く。それは私たち自身の未来だから」
 子どもの未来ではなく、自分の未来。そのために政治に飛びこむ。
 なんと切れ味のいいコメントか。
 若者が怒る社会は、希望があります。その希望を押しつぶす社会は、「徳」を失っています。
(2021年10月6日)