薬物合法化への流れ

 まだこんなポスター使ってるのか。
 しばらく前、ある地方の地域センターで見かけました。
「ダメ、ゼッタイ。薬物乱用は・・・」
 麻薬、覚せい剤の“ゼッタイ禁止”を呼びかけた厚生労働省のポスターです。

 このポスターを見ると、「やりたくなるよね」と薬物依存症の人はいいます。
 何人もが、そういうのを聞きました。逆効果、むしろそそのかしてるようなもんだと。
 そういう当事者の声を、このポスターをつくった人たちは知らない。

 いや、現場の人は知っているでしょう。こんなアプローチじゃ薬物依存は解決しない。どころか悪化する。
 でもそういう当事者や現場の声を圧倒的に押しつぶす、声ではない声がします。
 ダメ、ゼッタイ、ダメ。
 徹底的に禁止し、排除し、従わなければ厳罰を科す。

 ぼくはこの声が、ぼくらの社会のすべての抑圧の根底にあるんじゃないかと思います。
 女性への、弱者、障害者、生活保護への、そしてまた在日や移民への差別抑圧はみなおなじ根から出ている。美しい、強い国、国民すべてが清く正しく立派で、生産性のある国を、という声。

 そうではない声が、21世紀になってはっきり聞こえるようになりました。
 そのひとつが、先週ニューヨーク州でマリファナが合法化されたことです。ニューヨークはアメリカでマリファナが合法化された15番目の州となりました。マリファナ解放は、もう止めようのない流れでしょう。

マリファナ (Pixabay)

 もうひとつの例がポルトガルです。2001年にヘロイン、コカインを含むすべての麻薬を合法化しました。劇的な政策転換によって薬物の依存症もまた劇的に減りました(Nicholas Kristof, October 1, 2017, The New York Times)。この革命をもたらした政治家、アントニオ・グテーレスさんは後に国連事務総長になっています。
 こういう流れから、決定的に乗り遅れています。日本は。

 いまからでも遅くはない。
 やめましょう。「ダメ、ゼッタイ」を。
 じゃあどうすればいいか。それは国ではなく、まず当事者の声を聞くことからはじまります。
(2021年4月5日)