虐殺オリンピック

 かなりどぎつい表現ですが、ワシントン・ポストは社説(去年12月7日)で北京の冬季五輪を「虐殺オリンピック Genocide Olympic」といっています。
 中国の人権問題、ことにウイグル民族への迫害のためです。


 欧米のメディアはオリンピックとともに、民族虐殺や人権問題をおなじような頻度で報道しています。でも外交ボイコットは米英など数か国にとどまりました。このままでは「すばらしい感動のオリンピック」の陰に「人権」は消えるのではないか。

 と思っていたら、目に見えないところで影響は出ているとBBCニュースがいっています。オリンピックのスポンサー企業が鳴りをひそめているからです(Winter Olympics: Global sponsors quiet ahead of Beijing Games. 28 Jan. 2022, BBC)。

五輪支援トップ13社ロゴ

 北京の冬季オリンピックは2月4日から。ふつうならいまごろは関連のコマーシャルがいっぱい流れている。でもことしはそうではない。
 BBCの調べでは、スポンサー企業のツイートは去年の東京オリンピック直前にくらべて劇的に減っています。アメリカの元オリンピック委員会マーケティング担当のリック・バートンさんは、みんな綱渡りをしているようなものだといいます。
「どの企業も中国政府を怒らせるようなことはしないし、できない」
 別の専門家は、スポンサー企業の広告宣伝が異常に少ないのは「ワシントンのせいだ」といっています。バイデン政権による外交ボイコットや、アメリカ議会による厳しい批判で身動きが取れないということでしょう。
 IOCを通して「虐殺オリンピック」を支えている日本のブリジストン、パナソニック、トヨタの3企業も静かなようです。

 29日のニューズウィーク日本版サイトは、「まったく盛り上がらない北京五輪」という記事を載せました。アメリカではオリンピックのスポンサー企業のCMが2本しか流れていなくて、それも選手だけをフィーチャーし、北京や中国にはいっさい触れない内容なので、視聴者はこんどのオリンピックをどこでやるかも知らないだろうといっています。

 でも、はじまってしまえばIOCの、中国の勝ちなんでしょうね。
 今週末からあの選手、この競技の感動の場面が洪水のようにテレビ画面に流れる。それを見て誰もが、いや香港とチベットとウイグルの人をのぞいてですが、すばらしいオリンピックだと納得するのでしょう。

 ぼくは見ないからいいんですが。視聴拒否じゃなく、テレビを持っていないので。
(2022年1月31日)