里山早春

 きのうは里山を散策してきました。
 横浜の「新治(にいはる)市民の森」というところです。雑木林と谷戸が入りくみ、田んぼや畑、沼や小川がむかしながらの姿で残っていました。小さいころを思い出します。

 近くに住む友人と、その友人家族とともに8人で思い思いに山道を登ったり下ったり、もちろん途中でたっぷり道草を食いながらの散策です。

新治市民の森

 足元を見ればツクシやタンポポ、フキノトウが、目を上げると谷戸の奥にモモが咲いています。スギやクヌギの雑木林ももうすぐ芽吹くでしょう。山が笑いだす前に、息をためるひととき。

手入れされた杉林

 沼地にはアカガエルがいました。1匹いるな、と思ってよく見たら、3匹5匹、沼全体ではかなりの数です。春になるといちばん早く出てくるカエルだとか。クワークワーとこもった声があちこちから聞こえます。里山にもちゃんと春が来ていると、カエルの声が教えてくれました。

アカガエル

 市街化が進む横浜の郊外にこれだけ自然が残っているのは奇跡です。行政の施策もあるけれど、この里山の維持活動をつづけている市民ボランティアの力が大きいのでしょう。

 かねて外出が減っていたところに緊急事態の追い打ちで、先月からぼくらはさらに行くところがなくなりました。里山に行きましょうと声をかけてくれた友人に感謝です。何があるわけでもなく、何をするでもない、ただ雑木林をうろつくというぜいたく。

 それがほんとのぜいたくに思えるのは、雑木林もさることながら友人たちと顔と顔を合わせて過ごす時間があったから。これが大事なんだと、コロナ以前にはここまで切実に思うことはありませんでした。

 失くなってみてはじめてわかることがたくさんあるんですね。早くコロナ以前の日々にもどりたいけれど、もう三密にはもどれないという気もします。少なくともここ1,2年は。
(2021年3月10日)