金魚を放流しないで

 金魚を放流すると環境破壊になります。
 アメリカのミネソタ州が、いらなくなった金魚を池や湖に放流しないようにと訴えています(People dumped their pets into lakes, officials say. Now football-size goldfish are taking over. July 11, 2021, The Washington Post)。
 ミネソタ州のバーンズビルという市の訴えです。

 ミネソタは「1万湖の州」といわれるほどに湖の多いところで、バーンズビルにもいくつかの湖があります。そのひとつで、「金魚が増えている」と住民からクレームがありました。さっそく市の担当者が行ってみたら、いるわいるわ、フットボール大の金魚までとれたそうです。

バーンズビルで捕獲された金魚
(同市フェイスブックから)

 水槽で見るかわいい金魚が、自然界では力強くなる。
 もちろん、飼い主は金魚が飼えなくなって、捨てることもできずに放流するんでしょう。大きな湖で元気に暮らしてねと。でも金魚の生命力はすごい。どんどん増えて30センチ、2キロの大きさになることもあり、ほかの魚を圧倒する。しかも泥を掘って水草の根を食べるので、草は枯れる、水は濁る、生態系は破壊的な被害を受けます。金魚の放流はミネソタの州法で禁止されています。

 バーンズビルの担当者はいいます。
「住民はみんないい人たちなんだけど、金魚は放流したら害になるなんて、思いもよらないんですよね」

ミネソタ州は湖の州 (Pixabay)

 金魚の自然界への侵入はバーンズビルだけの問題ではありません。
 近くのカーヴァー郡では、去年駆除を試みたら1日で3万匹もの金魚を捕獲したとか。金魚などの「侵入生物」駆除を専門にする業者も現れました。おなじような金魚の害は、カナダやオーストラリアでも起きているそうです。

 さてここでいう金魚は、日本でよく売られている金魚とおなじものか。
 ワシントン・ポスト紙の記事にはちゃんと金魚の学名「Carassius auratus」がありました。調べてみると日本の金魚とおなじ、コイ科フナ属の魚です。
 日本で市販されている金魚がすべて、バーンズビルのような30センチもの大きさになるわけではないけれど、なかには放流すれば大きくなるものもあるようです。
 池や沼で30センチ級の金魚がとれたという話はあまり聞かないから、日本がミネソタ化するのはこれからなのでしょうか。
(2021年7月14日)