閉鎖集団にも風穴

 経団連に女性の副会長が誕生。
 ・・・ま、どうでもいいよな、そんなこと。大部分の人にとっては。
 でもこれ、ぼくにとっては注目すべき現象なのです。

 2月11日、このブログで小熊英二さんの『日本社会のしくみ』について書きました。
 この本の冒頭、経団連トップの話が出てきます。それを読んで驚いたのは、経団連には正副会長が全部で19人いるけれど(ってことは副会長が18人、なんでこんなに多いの?)、全員が男だということ。むかしも、いまも。

 しかも、その“えらそうなオッサン”たちのほとんどが東大卒、残りも一橋や京大などの有名大学ばかり。おまけに全員、起業や転職の経験がゼロ。「外の世界」を知らない。

 小熊さんの本は、ここからはじまっています。
 なぜこうなったのか、そのためにぼくらの社会にはどんなしくみができあがったかを描きだしています。機会があったら読んでほしいけれど、ぼくがこの本を読んで思ったことを無謀なワンフレーズにしてしまうなら、日本社会は「閉じてる」ってことです。どうしようもなく。

 そこに、ちょっとだけ風穴が開いた。
 それが今回の「経団連・女性副会長」の誕生じゃないでしょうか。

 9日の朝日新聞によれば、IT企業の大手、ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子さんが経団連副会長に内定したそうです。女性がそんなトップ・グループに入るのははじめてだから、この話、すんなりとはいかなかったらしい。就任の要請に対して「南場氏側から反発もあった」なんて記述もあります。
 実現すれば、それはそれで一歩前進でしょう。

 女性の地位が、中国や韓国にも遅れをとる世界121位の国で、政府は「2020年代の早期に女性リーダー3割」という目標を掲げているとか。でもそれ、ほんとに女性の登用を進めたいからじゃなく、世間体、いや“世界体”をおもんぱかってのことにすぎないんじゃないか。だとするなら、この国は当分、中国や韓国に追いつくことはできない。

 なげかわしいことだけど、なげくだけではつまらない。
 あの経団連も、少しは変わるんだということに救いを見いだしましょう。
(2021年3月9日)