アフガニスタンにみんなの目が向いているとき、ヨーロッパの片隅では別な混乱が起きています。
ベラルーシとリトアニアの国境紛争です。
それがいま、ポーランドやラトビアとの国境にまで広がっているらしい。
ことの発端は、6月、ベラルーシからの難民が増えたことでした。
ベラルーシから隣国のリトアニアには、これまで年に数十人の密入国者がいたといいます。それが6月になり、1か月で470人にふくれあがった。7月には2600人にまで急増しました。
しかもそれはベラルーシ国民ではない。イラクやアフリカ各国からの難民です。
何が起きているのか。

調べてみると、難民たちはどうもリトアニアをめざして来たわけではない。ベラルーシに連れてこられ、そこからリトアニアへ越境するよう強制されている。
つまり難民を大量に送りこんで、ベラルーシがリトアニアに混乱をもたらそうとしているというのです。もちろんベラルーシは否定している。けれどこれは、ベラルーシによるEUの経済制裁への対抗措置だという見方をワシントン・ポストが伝えていました(August 1, 2021, The Washington Post)。

難民を、敵国を混乱させる武器にする。
独裁者というのはとんでもないことを考えるものだと思いました。利用された難民は不運というほかはない。
そう思っていたら、BBCが18日、続報を伝えています。
ベラルーシの警備部隊12人が、難民をリトアニア側に押し込む過程で国境を侵犯したというのです。おなじような事件が、リトアニアだけでなくポーランドやラトビアとの国境でも起きている。これはもうベラルーシのEU全体に対する挑戦です。
EUは18日の緊急内相会議で、リトアニアなどへの支援を決めました。

こうしたニュースは日本ではほとんど注目されません。でもぼくにとっては気になる現象です。もしも朝鮮半島で戦争が起きたら、あるいは台湾に対する中国の圧力が限度を超したら、日本にも大量の難民が向かうでしょうから。
武力紛争ではなく、難民紛争が起きるかもしれない。
それを受け入れるのか、あるいはシャットダウンするのか。
香港とアフガニスタンで何が起きたかを思えば、そんなのは妄想だと切り捨てるわけにはいかない気がします。
(2021年8月19日)