浦河港が静かです。
10年前だと、8月の浦河港はイカ漁船でごった返していました。スルメイカを陸揚げする漁船が岸壁に密集し、フォークリフトが発泡スチロールのケースを引きも切らずトラックに積み込んで、まるでお祭りのようでした。
その光景が見られません。
イカが獲れないのです。
同時に浦河名物の、東京では絶対に食べられない「朝イカ」もなくなりました。朝水揚げされたスルメイカの、さっぱりとした野菜のような食感が消えてしまいました。

次に起きたのがサンマだったと思います。
秋の味覚、サンマはいまや高級魚、都会では1尾500円は当たり前です。
嘆かわしい、と思っていたら、こんどはどうもサケらしい。
夏前に、町の人が「サケが獲れないんだよ」と眉をひそめていました。
5月から6月にかけて穫れるサケの極上品、時鮭、通称「トキ」がないのです。漁協の関係者でもなかなか手に入らない。
イカ、サンマにつづいてこんどはサケか。
背景には、世界的な乱獲があるのでしょう。
でも地球温暖化も、目に見えにくい大きな要因かもしれません。相乗作用でしょうか。

世界的なサケの名所、アラスカのユーコン川のある調査地点では、これまで170万尾も記録されていたサケの数が、ことしは15万3千尾にまで激減したといいます。もちろんこれまでにも不漁の年はあったけれど、ことしは次元がちがう。研究者は水温の上昇、温暖化が原因と見ています(Aug. 12, 2021, The New York Times)。
最近、だんだんとぼくは思うようになりました。
この地球で、天然の魚は年とともにますますぜいたくになる。いずれ天然ものはイノシシやシカとおなじように「特別な食べ物」になるだろう。いまはまだサケまでだけれど、いずれはブリ、アジ、イワシもそうなるのではないか。

スーパーで天然物を探すのは、そろそろあきらめたほうがいいのかもしれない。
ここらで考え方を転換し、養殖ものを見る目を鍛えたほうがいいのかも。
自然環境に正しく、おいしく、しかも労働者を搾取していない養殖もの、あるいは人工もの、そういうのを積極的に探し求めたほうがいいかもしれない。そんなふうに考えることがあります。
(2021年8月16日)