北海道は27日から、緊急事態宣言となりました。
月曜日の浦河ひがし町診療所は、デイケアのミーティングのテーマが「緊急事態」、何度目だっけ、覚えてないよといいながら、10人ほどでの話しあいでした。

みんなでコロナに対する理解を深めようというプログラムのはずが、そこは精神科デイケア、看板どおりには進みません。
コロナだと何をしてよくて、何をしたらいけないんだろう、というあたりから入ります。
不要不急の外出はだめ。感染者の多い札幌に行くなんてとんでもない。でも浦河町内なら出かけてもいいよね。まあそうだ。じゃ、隣町の静内町はどう?
ダメだよ、という声と、いいんじゃないの、という声が交差します。
そこで出てきたのが、「そっと行けばいいんじゃない?」。
あはは、と笑いながら、みんな、なんだかそんな気になっている。

団体で食事するのはバツ。黙食ならいいんじゃない?
黙って食べる。そういえばバスには「黙乗」ってあったよ。うそーっ! ほんとだって。
あるよね、だって温泉行ったら「黙浴」ってあったもん。
モクヨク、あはは。

そういう話をしている診療所の片隅に、町役場の「緊急メッセージ」がはってあります。
「食事は4人以内、短時間」「外出や移動を控えて」「都道府県感の移動も控えて」・・・
あれもだめ、これもだめ、じっとしてろ。役所はそういうしかないでしょう。
でもどこか、しらじらしい。
デイケアの「そっと行けばいいんじゃない」は、しらじらしさを見抜いた人たちのことばです。ここにいる精神障害者と呼ばれる人びとは、ある意味、ぼくらの社会でもっとも鋭いセンスを持った人たちです。

緊急事態を語るミーティングは、コロナへの正しい対応を知る、教える集まりにはなりませんでした。かろうじて出てきたのは、コロナについては噂だけじゃなく、みんな自分で情報を得るようにしようね、ということくらい。
専門家からすれば、歯がゆいミーティングです。
でもその歯がゆさが大事なんだろうと、ぼくは思います。
いま何を考えているか、どんな気持ちかを話しあう。不安なのか、心配なのか、困っていないか、そういう話ができてはじめて、その先に進める。この日は「その先」の一歩手前くらいまで行けたかなという感じでした。
(2021年8月31日)