DVを逃れるシグナル

 これ、使えるかもしれません。覚えておいて損はない。
 助けてください、のシグナル。
 とくに女性、子どもなど、暴力的な抑圧を受けやすい人たちのための。
 いままさに被害にあっていることを、音声ではなく「手のシグナル」で伝える。そのための手段です。以下のようなものです。

Credit: Canadian Women’s Foundation

 シグナルを伝えたい相手に向かって、1)親指を折った手のひらを向けてみせる、2)ぜんぶの指を折りたたんで握りこぶしにする、この2段階の動作で「助けて」になります。

 1分の動画もあります。
 このデモンストレーションでは、女性がケーキづくりの話をしながら「助けて」サインを出しています。

 もしも誰かが、どこかの家の窓から、あるいは走っている車のなかから、このサインを出していたら気をつけましょう。「DVの被害にあっているのかも」「監禁されてるんじゃないか」と疑ってみる。場合によったら警察に通報する。そのための手信号です。

 実際にアメリカで、このシグナルを出して救われた少女がいました(Missing Girl Is Rescued After Using Hand Signal From TikTok. Nov. 8, 2021, The New York Times)。
 ケンタッキー州のハイウェーで、16歳の少女が走行中の車からこのシグナルを出していたのです。たまたま横を走っていた車のドライバーがこれを見て警察に通報、少女を連れ去っていた61歳の男が捕まりました。
 少女は出会い系サイトで男と知り合い、車に引きこまれてあちこち連れ回されていたらしい。少女の家族からは2日前に行方不明の捜索願が出されていました。

 少女はこのシグナルを、動画サイト TikTok で見ていました。それを目撃したドライバーも、やはりTikTok で知ったということです。

 この「助けてシグナル」は、カナダ女性協会がつくりました。

 DVなどの被害対策です。DVは密室で起こり、被害者は連絡手段を断たれている。そのとき、たとえば家を訪問した人に何気ない話をしながら、加害者に知られずにこの手の動きを示すことができる。助けてください、と。

 カナダ女性協会は2020年、コロナ禍でDV被害が急増したことへの対策として、このシグナルを考案しました。いまでは世界銀行をはじめとして多くの組織が、このシグナルを広めているそうです。
 日本でも、広がると救われる人がいるかもしれません。
(2021年11月9日)