NBA選手の声

 中国のチベットやウイグルの弾圧に、真正面から抗議の声を上げているアメリカのスポーツ選手がいます。
 NBA(アメリカ・プロバスケットボール)、ボストン・セルティクスのエネス・カンター選手です。カンター選手は10月21日、自身のツイッターに、「残酷な独裁者・習近平へ」というビデオ・メッセージを発表しました。ダライ・ラマの写真入りTシャツを着たカンター選手は、ストレートに述べています。

「中国政府への私のメッセージは、チベットを解放せよということだ。チベットはチベット人のものだ」

エネス・カンター選手のツイッター画面
(10月21日)

 2分にわたるビデオで、カンター選手は中国政府の暴政でチベットには基本的人権も自由もなく、チベット人は言語も文化も宗教も奪われ、5千人の政治犯が投獄されているなどと指摘しました。そしてチベットを解放せよとくり返し、中国政府を強く非難しています。

 もちろん中国政府は激怒しました。このビデオが出てすぐ、セルティクスの試合は上映中止です。60万人いたというカンター選手のファンも、ネット上のアカウントがなくなったようです(China wipes Boston Celtics from NBA broadcasts after Enes Kanter slams abuses in Tibet. October 21, The Washington Post)。

カンター選手(ツイッター画面から)

 しかしカンター選手はそんな騒ぎを意に介さない。今月13日には「台湾の民主主義を支持しよう」というビデオを出し、ツイッターの #StandWithTaiwan への参加を呼びかけ、「台湾に自由と安全を。台湾は台湾人のものだ!」と訴えています。

 このカンター選手のビデオ・メッセージに、台湾の蔡英文総統が感謝のメッセージを発表する場面もありました。

蔡英文・総統
(13日ツイッター画面)

 NBAだけでなく、オリンピックをはじめとするあらゆるスポーツにとって中国は巨大な市場です。その中国を怒らせないようにとみんなが首をすくめている。でもカンター選手は人権問題にかんしては節を曲げません。
 それは彼がトルコ育ちで、トルコ政府の人権抑圧に抗議してきたという経歴があるからでしょう。カンター選手は、人権の抑圧や民族虐殺、民主主義の否定に、声を上げずにはいられない。

 そういう声を上げることに対して、最近の国際的なスポーツ界には「政治問題でなく人権問題ならOK」という流れが出てきたようです。ナオミ・オオサカ選手が人種差別に抗議するマスクで登場したのも、その流れのなかでの出来事でした。
 日本にいると、なかなか見えてこない流れです。
(2021年11月16日)