WTA、女子テニス協会が「金」ではなく「人権」を選択しました。
NBAなどのプロスポーツ団体が、中国の人権問題については軒並み沈黙し金もうけに走っているのに対して、WTAだけは筋を通したことになります。莫大な損失覚悟で。
拍手です。

WTAと中国の対立については、このブログでも書きました(11月19日、25日)。
この対立は、中国の女子プロテニスでトップ・プレイヤーのペンシューアイ(彭帥)選手が、中国共産党幹部に性的暴行を受けたと告発してはじまっています。ペンシューアイ選手はその直後から消息不明になり、WTAが調査を求めてきました。中国国営放送などが「告発はウソだ」「ペンシューアイ選手は自宅で安全に過ごしている」などの情報を流していますが、WTAのスティーブ・サイモン会長は本人に直接会えず、本人の自由意志が確認できません。

(Credit: Andrew Campbell, CC BY 2.0.)
こうした経緯から、WTAは1日、中国での女子プロテニスの開催をすべて中止すると発表しました(WTA Suspends Tournaments in China Over Treatment of Peng Shuai. Dec. 1, 2021, The New York Times)。
WTAのサイモン会長は、声明でいっています。
「ペンシューアイ選手の自由と安全について、彼女が監視され強制や脅迫を受けているのではないかと深刻に憂慮している」
もしも力を持つ人びとが女性の声を抑えつけ、性的暴行を隠すようなことがあったら、女性の平等というWTAの存在基盤は侵される、ともいっています。
「そのようなことがWTAとその選手に起きることは、容認できない」

この措置によって、WTAは今後何年にもわたり中国市場でえるはずだった数百億円もの収益を失った、と見られています。しかし選手たちからは強い支持をえている。
女子テニスのチャンピオンだったマルチナ・ナブラチロワさんは、「正しい選択だ。私はWTAを誇りに思う」といっています。またビリー・ジーン・キング、セリーナ・ウィリアムズ、ナオミ・オオサカ、パトリック・マッケンローらの元チャンピオンも、こぞってWTAやペンシューアイ選手への支持を表明しています。
ナブラチロワさんは、「で、男子テニスはどうするの」と聞いていました。でもこちらは反応がない。
ダメですね、男は。
いやそれよりもはるかにダメなIOC、国際オリンピック委員会ってのがあるんで、その陰でダメさ加減がかすんでいますけれど。
(2021年12月3日)