うつには運動を

 うつ病になったら、何か運動するといい。
 こんな研究結果が出たそうです。なんだか当たり前に思えるけれど、でもそういう学問的な裏付けがあるなら、うつになった人にいいやすくなる。気分が落ちこんでいるなら少し運動するといいよと。
 うつや、うつっぽい人に、「身体動かすといい」なんて、はたしていっていいものかどうか。これまでだったらぼくは迷ったと思います。やたらなことをいったらけない。でもこれからは少しいいやすくなります。運動がいいって、「そう書いてあったよ」と(The best treatment for depression? It could be exercise. March 15, 2023, The Washington Post)。

 イギリスの専門誌「スポーツ医学」2月号に掲載された論文は、ドイツにあるポツダム大学のA・ハイセル博士らがまとめました。
 それによると、うつ病の患者2千265人を調べたところ、どんな形であれ運動をすることで、ほとんどの場合うつの症状は改善されたということです。この研究結果に自信を深めたハイセル博士は、今後うつ病の治療には運動という項目が加わるだろうといっています。

 ぼくらは経験的に、気分が落ち込んだら身体を動かすといいときがあると知っています。散歩でも体操でも庭仕事でもいい。何かすれば気分転換になり、落ち込みから抜け出せることがある。でもそれがうつ病のような病気のレベルでも有効なのか。これまではそうとは考えられていませんでした。
 アメリカ心理学会が2019年に出したうつ病の治療指針には、いくつかの抗うつ薬と心理療法があげられているけれど運動という項目はありません。またWHOの指針も、他の療法と「あわせて」運動を勧めているくらいです。それが今回の研究で変わるかもしれない。

 うつ病と運動の関連を調べた研究はこれまでにもありました。しかしいずれも対象が数十人程度で、うつ病の治療枠組みを変えるほどのものではなかった。でも今回の研究は2千人以上を調べ、それなりの説得力を持ちます。
 おそらくこれからのうつ病の治療は、何らかの形で運動を取り入れていくでしょう。

 その一方で、今回の研究をまとめたハイセル博士自身が指摘している困難があります。
「みんな、とにかく動けない。出だしの一歩をまず考えなきゃいけないんです」
 運動しよう、どんな運動でもいいから。そういったところで、うつの人はハイそうですかと動くわけではない。症状が重ければ重いほど、そもそも家から出ない。ベッドから出ない。話をすることもできない。そうする気が起きない。
 うつ病には運動がいい。でももしかしたら、運動しようと思った時点で問題はすでに解決されているのかもしれません。
(2023年3月17日)