こころの病いの拠点

 浦河でもぼつぼつ桜が咲きだしています。
 町の観光施設「アエル」にあるエゾヤマザクラの並木も、ふわっとしてきました。ざっと見たところ二分咲きくらいでしょうか。このぶんだと連休中に満開になるでしょう。
 町の職員がライトアップ用の照明や発電機を設置しています。以前は連休が終わると満開でしたが、最近は温暖化で開花が早まっているかもしれません。

 さてひがし町診療所は水曜日の午前中、スタッフミーティングです。
 きょう話題のひとつは、「リワーク」の盛況でした。
 リワークというのは、職場で行き詰まり、精神科のお世話になった人びとの“こころのリハビリ”プログラムです。治療を受けてよくなったけれど、そのまま以前の職場に復帰したらまた倒れてしまう、そうならないよう、こころの準備を整える過程です。

エゾヤマザクラの並木(浦河町アエル、27日)

 目立つのは役場や学校から来る人たち、つまり教員と公務員です。
 長時間の残業がつづき、ある日ばったり倒れて救急車で運ばれる、疲れ切って働くことができない、そもそも職場に出られない、といった人たちが来ます。
 そういう人が回復できるよう、診療所はいろいろな「治療」をこころみます。薬を出したりカウンセリングをしたり休養させたり。認知行動療法などをこころみることもある。でもそうしてよくなったとしても、それで解決されるのは問題の半分でしかありません。
 半分どころか、ごく一部かもしれない。

 病気なのは倒れた本人ではなく、職場かもしれない。
 人が倒れるような働き方をさせる、そういう職場こそが病んでいるのではないか。倒れる人が何人も出てくるようなら、それはもう本人の問題とはいえない。そういう「病気の職場」をどうすればいいのか。
 リワークの「盛況」をめぐる話は、そんなふうに広がりました。

 リワークにやってくる人びとの多くは、倒れたのは「本人のせいだ」という物語に回収されています。それではどんなにいいリワーク・プログラムの成果もかぎられてしまう。職場の労働環境をどう見直してもらうか、そこを無視することはできません。
 職場と本人のあいだにわずかな隙間を見つけ、診療所のスタッフは学校や役場に語りかけようとしています。いい学校もいい役場もあるけれど、そうでないところが多い。語りかけといってもかんたんではありません。

 学校と役場。診療所から見るかぎり、こころの病いを生む二大拠点です。
(2022年4月27日)