すみれの夏祭り

 石窯で焼いたピザをみんなで食べよう。
 こんな声がかかり、グループホーム「すみれⅢ」で土曜日、ピザパーティが開かれました。
 もともとは、浦河ひがし町診療所で長年つづいている子育て支援グループ、「あじさい」の夏祭りの拡張版です。そこにことしは不登校などの子どもが集まる「思春期プログラム」も合流し、診療所デイケアからもあれこれの参加者があり、思いがけずたくさんの人でにぎわいました。

 石窯に火を入れたのはグループホーム住人の田中さん、水野さん、それにワーカーの泉さん。10時ごろから薪を燃やし、1時間近くかけて窯を加熱しました。その間にウッドデッキでは調理係が小麦粉をこねてパン生地をつくります。それにハムやチーズ、アスパラ、前日にえりもで取れたミニトマトなど多彩なトッピングを各自盛りつけ、石窯に運びました。火が強いときには3分ほどで20センチのピザが焼けます。

 この日集まったのはおとなから幼児まで30人以上。40枚近く用意したピザが石窯の火力でどんどん焼けます。
 つくって、焼いて、食べて。その間に子どもは遊び回り、若者はゲームに興じ、おとなはのんびりしたり、話しこんだり、うろついたり。ウッドデッキと広い庭の中心に「火と食べもの」があると、場が華やぎ、夏の午後が光を増します。

「子どもだけだと、管理になるんですよ」
 ウッドデッキに寝ころんだ精神科医の川村敏明先生が、いきなりそんなことをつぶやきました。
「こういう自然なのがいいんです。ヘンな人もいて」
 子どもだけが集まる幼稚園のようなところは、どうしても管理が先に立ってしまう。いまこの庭先はそうではない。おとなも子どもも、こういうふうに混じりあっているのがいい。なかには世間一般の基準からすれば「ヘン」な人もいっぱいいるけれど、そういう人がごちゃまぜだと、どういうわけか全体がヘンではなくなっている。無理のない自然な人の集まり。先生がいいたいのはそういうことのようです。

 たしかにピザパーティには、発達障害の人も不登校の人も、また浦河以外の町にいたら精神科病棟に入院するだろう人もたくさんまじっていました。でもここでは誰もそんなことを気にしない。そういう人がいることさえ忘れて、いま、ここを楽しんでいる。
 モノやカネではない、ほんとうの意味でのゆたかさが石窯ピザパーティにはありました。
(2022年8月8日)