もうひとつの戦争

 ウクライナがパッタリと止まっています。東部バフムートでの戦闘はつづいているけれど、戦況は膠着状態。最近メディアを賑わしたニュースといえば、アメリカの軍事機密が大量に流出した事件くらいでしょう。それも犯人が逮捕され、流出した情報も「トップ・シークレット」とされるほどにはシークレットでなかった。
 それでも興味深い情報がいくつかありました。そのひとつが、ウクライナに西側各国の特殊部隊が入りこんでいたことです(Ukraine war: Leak shows Western special forces on the ground. April 12, 2023. BBC)。

 BBCによれば、流出した機密文書の「3月23日付」のページにこの記述がありました。ウクライナには西側各国の特殊部隊がいて、その内訳はイギリス50人、ラトビア17人、フランス15人、アメリカ14人、オランダ1人とありました。
 彼らがどこで何をしているかなどは書かれていない。いつから、どこにどれだけいるのか、いまもいるのかはわからない。
 これまで欧米各国はウクライナに巨額の武器援助を行ったけれど、ロシアとの直接対決を避けるために兵員は派遣しなかった。だから建前上、ウクライナにはウクライナ軍以外の軍隊はいっさい存在しないことになっています。でも現実にはいました、いないはずの部隊が。

 その規模は100人弱。彼らがどう動こうが、アクション映画じゃあるまいし戦況は変わらない。でもぼくが注目したのはイギリス特殊部隊の存在です。彼らは50人で、もっとも多い。彼ら忍者兵士は戦場で、あるいは後方で何をしているのか。
 そしてわかった気になりました。
 今回の戦争でもっとも正確に戦況を把握していたのは、ウクライナをのぞけば米英の2国です。アメリカはともかく、イギリスがなぜこれほど情報を持っているのか。それは特殊部隊の存在と無関係ではなかったということです。

 じつにイギリス的だと思いました。強大な軍備という「力」に頼るのがアメリカなら、陰に陽に、ときには特殊部隊が危険を冒しても収集する「情報」で国を守る、それがイギリスではないのか。ハードではなくソフトで大国に向き合う国家の戦略。そんなことはどこにも書いてないけれど、おそらくはイギリス人の日常にしみ込んだ感覚でしょう。それが自然に国の戦略に反映されている。だから、いるはずのないイギリスの兵士が50人もウクライナに入りこんでいる。ぼくはそんなふうに考えてみました。
 ウクライナはきっと彼らの情報に助けられている。でも自分たちを助けているのが特殊部隊だとは知らないのではないか。なぜなら特殊部隊とはそういう動き方をする部隊だから。何があったかは戦争が終わらないとわからないし、終わった後もわからないかもしれません。
(2023年4月19日)