ウィズ薬物

 マリファナや麻薬の「解禁」が進んでいます。
 絶対ダメといいつづける日本は、世界の潮流から遅れているとしか思えません。
 欧米が麻薬に寛容なのはよく知られているけれど、最近驚いたのは東南アジアのタイがマリファナを一部合法化したことでした。タイは日本よりも自分たちの社会を変える力を持っているのかもしれません(Thailand legalises cannabis trade but still bans recreational use. June 17, 2022, BBC)。

 BBCによれば、タイでは誰もが登録すれば一戸あたり6株まで、マリファナを栽培できるようになりました。許可をえれば企業による大規模な栽培も可能です。
 またマリファナの「ハイになる」有効成分、THC(テトラヒドロカンナビノール)が0.2%以下であれば食材として使うことができる。チキンのマリファナ風味というような料理もできるそうです。依然として「娯楽のための使用」は禁止されるけれど、事実上の合法化です。
 タイ政府はマリファナの解禁を農業や観光振興の一環と捉えているようで、マリファナの苗百万本を市民に配布しました。

 一方、アメリカでも多くの州でマリファナの合法化が進んでおり、連邦政府もそうすべきだという動きが進んでいます。4月1日、下院が合法化を可決しましたが、保守共和党の多い上院では議論が進んでいません。とはいえ長い目で見れば、マリファナだけでなくすべての薬物の個人使用を認めるのは時代の流れでしょう。

 こうした面で北米の先端を進むのは、カナダのブリティッシュ・コロンビア州です。
 ここでは4年前にマリファナを認めましたが、今回はコカインも覚せい剤も含め、すべての麻薬の個人使用を合法化しています(May 31, 2022, The New York Times)。

バンクーバー
(ブリティッシュ・コロンビア州)

 この思いきった方向転換は、アメリカとおなじようにここでもまた、麻薬の過剰摂取による死亡が急増したためでした。しかし「禁止と処罰」ではなく、「助け守る」方向でこの社会問題に臨んだのです。

 薬物依存は禁止したら逆効果。「絶対ダメ」はダメなのです。このことをカナダの人びとは、多くの悲劇を経験したのちに学びとったのでしょう。その結果としての合法化だったはずです。

 少なからぬ社会が「ノー薬物」から「ウィズ薬物」に進んでいる。
 日本の「ノー薬物」は、社会のあり方としては中国の「ノーコロナ」とおなじように、禁止と処罰の息苦しい停滞をもたらしているのではないでしょうか。恐ろしいのはそれを息苦しいと感じなくなっていることです。
(2022年6月17日)