ウクライナは折れない

 ウクライナ人の9割がゼレンスキー大統領を支持し、8割がロシアとの戦争に勝つと考えている。
 こんな世論調査の結果を、ウクライナ国立社会科学研究所がまとめました。あれだけの戦禍をこうむっているのに、ほんとかなとも思うけれど、長年の業績がある研究所の調査です。手前味噌でもないでしょう(Ukrainians believe they’ll win the war, a survey finds. Analysis by Mikhail Alexseev and Serhii Dembitskyi. August 15, 2022, The Washington Post)。

ウクライナ国立社会科学研究所ロゴ

 この調査は去年12月とことし7月の2回、年令や性別などで国全体を反映するよう抽出された475人のウクライナ人を対象に行なわれました。
 調査対象の70%が、家や友人を失ったり負傷したりするなど、戦争による深刻な被害を受けています。にもかかわらず大統領への支持は固い。大統領の業績を10点満点で評価すると、戦争前は3.8だったのが、ことし7月には8.9にまで上がりました。しかも88%は大統領を「かなり」か「全面的」に支持している。これは戦争前の20%にくらべて雲泥の差です。

 対象者の80%は、ウクライナがロシアとの戦争に勝つと信じている。
 勝つというのは開戦以前の境界までロシア軍を押しもどすこととされているので、ちょっと非現実的ですが、ほとんどの人はできると信じている。
 その一方、かなりの人が戦争は長期化すると覚悟しています。40%の人が6か月から12か月、23%の人が1年以上、戦争はつづくと思っている。
 平和な日本にいるぼくらとは異なる感覚が、ウクライナ人にはあるようです。

 その背景にはふたつの大きな要因があると、調査を分析した専門家ミハイル・アレクセイさんとセリイ・デミツキーさんはいいます。
 ひとつは、ロシアによるウクライナへの攻撃は今回がはじめてではないこと。ウクライナが2014年の市民革命でロシアの傀儡政権を倒したときも、ロシア軍は攻め込んできました。そこに民主主義があるかぎりロシア軍はやってくる。そのくり返しのなかで、ウクライナ人はあきらめるのではなく鍛えられる一方でした。

 ふたつめは、ロシアの脅しがかえってウクライナ人を結束させたこと。
 いまウクライナで、自分のアイデンティティはロシアではない、ウクライナだと思う人は、戦争前の63%から82%にまで増えている。2013年の50%からは見れば劇的ともいえる変化です。
 ウクライナ人のこの「集団的楽観」は、ロシアのせいであるとともに、西側の支援が人びとに希望を抱かせたからでもあると、アレクセイさんたちは指摘しています。
(2022年8月17日)