コロナで変わる台湾

 過去最高の感染が起きている台湾。感染拡大もやむなしと、規制緩和へ。
 過去最高の感染が起きている上海。絶対コロナを許さないと、ゼロコロナ死守。
 みごとな対比です。
 台湾の人口は2400万人、上海は2600万人、おなじような規模だけれど、一方は日常にもどろうとしている。一方はロックダウンで陽性者はすべて施設に隔離する。厳しい規制が長引き、上海市民の不満は高まっています。それを見て、台湾の人びとはあらためて中国を見直しています(With an eye on Shanghai’s woes, Taiwan moves to live with the virus. April 28, 2022, The Washington Post)。

上海市

 両者のちがいは、コロナとともに生きるか、コロナなしで生きるかです。
 世界的にみれば、ニュージーランドやオーストラリアのように「コロナなし」でがんばってきた国があります。でもワクチンが普及し、感染しても重症化しにくくなりました。長引く規制で国民も疲れたので、「コロナとともに生きる」路線に転換しています。

 台湾もこれまで「コロナなし」に努めたけれど、すでに80%の人がワクチンの接種を終えました。これ以上厳しい規制は必要ないと、段階的に規制を撤廃します。感染が増えるのは承知のうえで、「コロナとともに生きる」ことにしたのです。

台北市

 新しい方針に、73歳のチュー・チャンミンさんは賛成です。去年5月、感染が広がったときは3か月も家から出られませんでした。あんなのはもうこりごりだといいます。
「あのときはワクチンもなかったから、かかったら死ぬと思って“ゼロコロナ”に賛成だった。でもワクチンもしたし、もとにもどったほうがいい。上海みたいなロックダウンをしたら気が変になるよ」

 上海では日常生活が止まり、強制隔離や食糧不足への不満が高まっています。長引くロックダウンで、中国経済は30年来の不況になるともいわれる。それでもゼロコロナを変えようとしない中国は「暴力的」で「人権無視だ」と、台湾SNSの80%が批判的です。

 ワシントン・ポストのコラムニスト、デビッド・ドレールさんが、「習近平とプーチンはよく似ている」といっていました。
 中国はコロナに勝ち西欧諸国よりすぐれているという習主席は、いまさらコロナを認めるわけにはいかない。
 ウクライナはロシアの一部だというプーチン大統領は、いまさらウクライナから兵を引くわけにはいかない。
 引くに引けない「大義」のもとで、市民は犠牲になるばかりです。
(2022年4月30日)