きのう、中国の「占占点」や「白紙」にふれました。
その後、続々と中国人の“叡智”が明らかになっています。
そのひとつが「バナナの皮」でしょう。AFP時事の記者が11月28日のジャパンタイムズに書いた記事によると、「バナナの皮」は中国語の発音が習近平とそっくりです。だから「習近平は辞めろ」といったら国家反逆罪かもしれないけれど、「バナナの皮をつぶせ」ならいえないことはない。ところがそれでも危ないから、いまは「エビ」と「苔」を付けるようになった。「エビ・苔」は中国語で「辞めろ」に聞こえるそうです。
つまり中国で「バナナの皮・エビ・苔」といったら、中国市民には「習近平辞めろ」に聞こえる。若者だったら「バナエビ」なんていって楽しんでいるにちがいない。
路上で出会った中国人が「バナナ!」といってニッコリしたら、「エビ!」と返せるようになりたい。英語で「シュリンプ!」っていっても、ことばの裏を読むのにたけた中国人はきっと了解し、もういちど笑ってくれると思います。
でも、それで何が変わるのか。
市民がいくら白紙を掲げても、習体制はみじんも揺るがない。それどころか、立ち上がった市民にはこれから本格的な弾圧がはじまり、やがて天安門事件のあとのように「巨大な沈黙」が訪れると多くの専門家は見ています。でもニューヨーク・タイムズの名コラムニスト、元北京支局長のニコラス・クリストフさんはややちがったニュアンスでした(Nov. 28, 2022, The New York Times)。
・・・これまでにも中国ではさまざまな抗議行動があったが、地方の労働争議や土地問題、公害がテーマだった。ゼロ・コロナは習体制そのものであり、中国人はロックダウン批判が習近平批判であると知っている・・・
絶対のタブーであった習批判がはじまっている。
・・・企業経営者からタクシー運転手に至るまで、中国人はたび重なるコロナ検査とロックダウンに疲れはてている。ところがカタールではワールドカップを楽しむ人たちが誰もマスクなんかせず、ノーマルな暮らしを楽しんでいるではないか・・・
そのカタールからの中継も、中国当局は時間を遅らせて検閲し、ノーマスクの観客を他の映像に入れ替えているといいます。
政権を批判できない市民は、風刺やあてこすりに流れるしかありません。しかしある政治学者がいっていました。独裁者がいちばん恐れるのはユーモア、いくら表現の自由を奪っても笑われたら力をそがれるものだと。
バナナ、白紙、占占点。せめてそれを広げ、ともに笑いたい。
(2022年12月1日)