フィンランドの変貌

 ウクライナ戦争で、フィンランドの世論が大きく変わりました。
 もはや中立国ではいられない、NATOに加盟すべきだと大半の国民が考えるようになったのです。
 あのフィンランドが、そこまで変わるとは。
 ロシアに対するヨーロッパの危機感がどれほど差し迫ったものかを、この変化から読み取れます(Putin’s war moves Finland and Sweden closer to joining NATO. April 11, 2022, The Washington Post)。

ゼレンスキー大統領の演説を聞くフィンランド議会
(フィンランド首相 Facebook から)

 戦争がはじまる前、フィンランドとスウェーデンはロシアを刺激しないよう、NATO、北大西洋条約機構への加盟を控えていました。アメリカとロシアのあいだで形式的な中立を保つためです。あのロシアも、そのうち変わるかもしれないという期待もあったでしょう。
 けれど今回の戦争は、プーチン大統領のちゃぶ台返しのようなものでした。
 いうことを聞かない国に対し、戦車大砲で攻め込み手当たりしだいに市民を殺戮する。そういうウクライナへの攻撃を目のあたりにして、フィンランドの人びとは「もはや、ロシアとはこれまで」と思ったようです。

フィンランド軍戦闘機
(Credit: Falcon_33, Openverse)

 3年前、国民の過半数はNATOへの加盟に反対していました。
 それがいま、77%がNATO加盟に賛成です。この圧倒的な支持で議論の方向は決まったと、サンナ・マリン首相は考えているようです。
「議論は夏までに終わると思います。慎重な議論になりますが、事態はきわめて厳しく、必要以上に時間をかけるわけにはいかない」
 ウクライナ戦争がどのような経過をたどろうとも、備えを急ぐということでしょう。
 歴史的な国是、中立からの転換です。
 隣国スウェーデンでもおなじような変化が起きており、北欧二国がNATO加盟に踏みきるのは確実です。

サンナ・マリン・フィンランド首相
(本人の Facebook から)

 もちろんロシアは反対している。この二国がNATOに加盟すれば「重大な軍事的、政治的結果を招く」と警告しています。けれど北欧はウクライナとはちがう。フィンランドもスウェーデンも長年NATOと密接な協力関係を保ち、合同軍事演習を実施するなど、実態としては正式メンバーに近かった。加盟は形式上の手続きとすら見ることができます。
 スウェーデンのカール・ビルド前首相は、ワシントン・ポスト紙に寄稿していいました。
「われわれはもはや、幻の中立にもどることはできない」

 ロシアの短慮は、二つの中立国を敵国に回したのです。
(2022年3月13日)