プロパガンダを読む

 やっぱりウクライナは、ロシアとはちがう。
「死んだふり」だったようなウクライナ軍が今回見せた劇的な反転攻勢に、そう思いました。
 北東部でウクライナ軍の広範な反撃が進み、ロシア軍はパニックを起こし敗走しています。要衝イジュームが陥落し、ロシアは今後南部戦線での補給に深刻な問題をかかえることになるでしょう。
 強大なロシア軍に立ち向かったウクライナ軍の動きは、ひらひら舞いながら弁慶を倒した牛若丸のイメージと重なります。

奪回した町に国旗を掲げるウクライナ軍
(ウクライナ国防省 Twitter から)

 ロシア軍はあきらかに不意を突かれました。
 南部ヘルソン一帯でウクライナの反攻にそなえ、兵力を北から南に移したばかり。そうしたらウクライナは手薄になった北に攻めこんできた。そんなのありかと、ロシアはほぞを噛んだことでしょう。
 メディアもおなじです。事態がこんなふうに展開するとはほとんど予想できなかった。ウクライナ政府が厳しい箝口令をしき、米英の情報機関も情報を出さなかったから。
 しかし、兆候を捉えていた人たちがいました。
 ロシアのブロガーたちのなかに。
 ブロガーは前線の兵士のなかにもいるようで、しばしば貴重な情報をまっさきに伝えたと、ニューヨーク・タイムズのアントン・トロイアノフスキー記者が10日、書いていました。

敗走するロシア軍車両
(ウクライナ国防省 Twitter から)

 そのひとりが、8月30日に投稿しています。ウクライナ軍が反撃のためにバラクリヤの近くに集結しているのに、ロシア軍は防衛に動いていない。
「おいおい、こっちの敵に備えなきゃいけないよ」
 警告の数日後、ウクライナ軍はバラクリヤの町に攻めこみました。

バラクリヤに揚がったウクライナ国旗
(ウクライナ国防省 Twitter から)

 230万人のフォロワーがいるブロガー、ユーリ・ポドリャーカさんは9日の投稿で、ロシアがこうした戦場での失敗を直視しなければ、誰もロシア国防省を信じなくなるし、政府全体も信じなくなると、内部から異例の批判をしています。

 ロシアのブロガーたちは、プーチン大統領のプロパガンダをあおり、広げてきました。誇大妄想とヘイト、フェイク情報があふれている。でも情報のプロ、ジャーナリストなら、そこから拾うべき情報を拾い、行間を読まなければなりません。ニューヨーク・タイムズは今回の事態を、ロシア・ブロガーを通してある程度予測していたのかもしれません。ことが“はじけて”からの速報は、ウクライナ軍の電撃作戦によく追いつき、いちばん読みごたえがありました。
 日本のメディアをぼくは見ていないのですが、たぶん問題外だったでしょう。
(2022年9月12日)