ムール貝を食べよう

 食べていい魚と、食べてはいけない魚がある。
 だから魚はちゃんと選んで買いましょうと、BBCの特集記事がいっています。持続可能な漁業のために。魚好きとしては、そりゃそうだと思いつつ、ややこしい時代になったもんだと、ため息も出ます(Can eating fish ever be sustainable? August 11, 2022, BBC)。

 この記事で目を引いたのは、「魚評価アプリ」でした。
 スーパーなどで売っている魚を見て、「これ買おうかな」と思ったら、その場で魚評価アプリを立ち上げる。すると買ってもいいかどうか、持続可能な漁業という観点からの1から5までの評価を、その場でアプリが教えてくれます。
 アプリの例として、イギリスの「よき魚の手引」(Good Fish Guide)、アメリカの「魚介ウォッチ」(Seafood Watch)がスグレものと紹介されていました。いずれもスマホにダウンロードして使います。

魚評価アプリ「魚介ウォッチ」サイトから

 どんな魚が高評価か。
 それは魚の種類、天然か養殖か、漁獲場所、漁獲方法あるいは養殖方法、流通経路など、さまざまな要素の総合評価となります。その前提として、売り場に並んだ魚にはかなりの程度まで、正確な情報が記されていなければなりません。漁獲地などの情報がない魚は問題外です。

 おなじ種類の魚でも、悪名高いトロール漁法で獲ったものより延縄の方が高評価になる。天然のアトランティック・サーモンだと最低の評価5だけれど、養殖サーモンなら3に上がります。天然サーモンの評価が低いのは、資源が枯渇しているだけでなく、遠洋で獲ると燃料費がかさむから、つまり炭素排出量が多く地球温暖化を進めるからです。
 もう多くの天然ものは「持続的じゃない」んですね。

 当然ながらこのアプリでは、ウナギなんか「買ってはいけない」になるでしょう。本マグロもそれに近いはず。スルメイカ、サンマも似たようなものでしょうか。
 興味深かったのは、ムール貝の評価が高いことです。養殖がかんたんで、病気にならないから抗生物質が不要、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素も豊富、環境に与える負荷が少ないどころかむしろ海洋環境の改善に貢献するのだとか。これからはぼくも、ムール貝をうまく食べる方法を考えなきゃいけません。

 アプリ「魚介ウォッチ」をつくったエリン・ハドソンさんはいっています。
「消費者が持続可能な魚介を求めれば、レストランやスーパーもそうする。生産者がどう答えるかより、まず消費者が質問することが大事なんだ」
 ただの魚好きではなく、よき消費者にならなければいけないんですね。
(2022年8月16日)