ロシアの北朝鮮化

 ウクライナや欧米については、ありあまる情報があります。
 でもロシアはよくわからない。ロシア国民は圧倒的にプーチン支持だというけれど、みんな不安なんじゃないか、おかしいと思ってるんじゃないかと思ったら、そうではないらしい。むしろ国全体がさらに「行け行け、ウクライナをやっつけろ」になっている。硬化、いや激化していると、13日のワシントン・ポストを見て思いました(As Russia’s war in Ukraine founders, ominous rhetoric gains ground. April 13, 2022, The Washington Post)。

 これはラトビアのリガ発の記事です。
 いまのロシアでは、弾圧に耐えながら少数のジャーナリストが情報を集め、海外に伝えている。その重要な中継地が、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国です。ここから出てくる情報は、かなりロシアの内情を伝えているとぼくは見ています。
 その最新の記事が伝えるのは、ロシアがかぎりなく北朝鮮化しつつあることでした。

 ロシア国営テレビでは軍事専門家が、ロシアの侵攻に反対するウクライナ人は強制収容所に入れなければいけないといっている。議会の軍事委員会の委員長は、そういうウクライナ人を“再教育”するには30年から40年かかるともいう。
 ワイドショーの解説者は、ロシアに抵抗しているウクライナ人は“集団的狂気”にとらわれている、「だから彼らをナチスと呼ぶ」ともいっている。「彼らは本性がケダモノ。ケダモノの憎しみと意志で、子どもたちを国のなかに閉じこめている」
 悪を壊滅させる正義の戦争は、30年かかっても40年かかってもかまわない。

(4月4日 ゼレンスキー大統領 Facebook から)

 これは一部過激派の発言ではないと、イタリアの大学でジェノサイドを研究する専門家、ユージン・フィンケルさんはいいます。政府の幹部がおしなべて“ジェノサイド的”な発言を新聞テレビでくり返している以上は。
「彼らはウクライナを消滅させようとしている。国家としても集団としても。そのためにはどれだけの人が死んでもかまわまいと思っている」
 戦争犯罪といわれようがジェノサイドといわれようが、気にしない。

 ウクライナを、ウクライナ国民だけでなく歴史も文化も言語も、人びとの記憶までをもこの地上から消し去らねばという思い。それがロシアを、プーチン大統領を突き動かしているのでしょう。
 大部分のロシア人は善良で平和な人たちと信じたい。でもそういう思いをヨーロッパで、ことにバルト三国で抱くのは、日本で抱くよりはるかにむずかしいと思います。
(2022年4月14日)