ロシアの戦争

 ウクライナ戦争がはじまって2か月近くになる4月17日、ワシントン・ポストが戦争の総括記事を出しました。日曜日の朝、これを読んだアメリカの政治家、専門家は多かったでしょう。この記事で印象深かったのは、ウクライナ戦争は「プーチンの戦争」ではなく「ロシアの戦争」だという見方でした。
 剛腕の独裁者がひとり暴れているのではない、それを支えるロシア国民がいるという冷めた分析です(U.S., allies plan for long-term isolation of Russia. April 17, 2022, The Washington Post)。

ウクライナ東部ズミイ(3月)
(ウクライナ国防省撮影)

 アメリカはロシア封じ込めの新戦略を、ことし6月のNATO、北大西洋条約機構での首脳協議で提案するでしょう。これはNATOがここ10年以上とってきたロシアとの融和路線、“戦略的パートナーシップ”からの決別となります。

 バイデン大統領は民主主義と全体主義の戦いは長期戦を覚悟しなければならないといっています。
「われわれは団結しなければならない。今日、これから、そして何年も、何十年も。かんたんではないしコストもかかるだろうが」
 ヨーロッパの首脳のひとりはいいます。
「ロシアの侵略から学べることがあるとすれば、どんな安全保障上の約束や期待も意に介さない国があるということだ」

NATO本部(ブリュッセル)

 欧州の首脳を、封じ込めという歴史的な転換に向かわせるには二つの要因があったといいます。
 ひとつは、ウクライナでどんな停戦があろうと暫定的だということ。プーチン大統領はかならずロシア軍を立て直し、新たな攻撃をはじめるという認識です。二つ目は、今回ロシア軍が引き起こしたウクライナ市民の大量虐殺と徹底的な破壊です。

 プーチン大統領がいるかぎり、安定と平和はない。多くのヨーロッパ人がそう考えるようになりました。しかしそのプーチン大統領の背後には、ロシア国民の強い支持がある。
 リトアニア国防省の高官がいったそうです。
「全体の責任というものがある。最初、われわれは “プーチンの戦争”といった。いま多くの人が、これは“ロシアの戦争だ”といっている」

モスクワ (iStock)

 ロシア国民の多数が支持する戦争。それが「全体の責任」ということでしょう。
 その主張を聞いてぼくは思います。知っていて支持したのであれば責任を問えるかもしれない。けれど、あとで「知らなかった」ということはできるのだろうかと。
 ロシア人だけでなく、ぼくらもまた。
(2022年4月19日)