ロシアの苦戦

 3週間たち、ロシア苦戦です。
 ロシア軍は勝てない、けれどウクライナはロシア軍を追い出すこともできない。これがメディアから読み取れるいまの見通しです。長期にわたる悲惨な戦争という見通しは変わらない。

 しかしニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、BBCの報道は、おとといから論調が変化しています。
 ポスト紙は15日、「プーチンは勝てない」というコラムニストの寄稿を載せました。翌日BBCの解説記事は、「プーチンの面子探し」を論じました。ロシアは勝てないけれど、どうすればプーチンの顔をつぶさずに事態を収集するかが焦点だというのです。

(ゼレンスキー大統領 Facebook から、14日)

 そして日本時間のきょう、タイムズ紙は控えめながら「ウクライナ軍が反攻に出た」と伝えました。記事からにじみ出るのは、ロシア軍が押しているけれど勢いが落ちている感触です(As Russian Troop Deaths Climb, Morale Becomes an Issue, Officials Say. March 16, 2022, The New York Times)。

 タイムズの記事で注目されるのは、アメリカ情報筋の「控えめな推定」でロシア軍に7千人の戦死者が出ていることです。
 これまでアメリカから出てきた数字は、先週の議会証言での2千人から4千人でした。この1週間で大幅に増えたことになる。開戦以来20日間で7千人の戦死者というのは、「アメリカ軍がイラクとアフガニスタンの20年でこうむった損害よりも大きい」、たいへんな数だと専門家はいいます。

 一般に、兵員の10%が失われると軍隊の戦闘能力は低下するといいます。ロシア軍はそれに近い状態になっているのかもしれない。米国防総省筋は、ロシア軍は兵士の士気低下の問題を抱えていると見ているようです。それがこの数日、キーウやハルキウなど、主要都市周辺でロシア軍の攻勢が停滞している要因なのかもしれません。

 一方タイムズは、ウクライナ軍幹部などの情報として、南部でウクライナ軍がロシア軍に対して反撃し、相当な損害を与えたと伝えています。どんな反撃か、どんな損害か、具体的なことはわからないけれど、防衛一方だったウクライナ軍が「打って出た」のははじめての報道です。それが後方の補給網への攻撃だったとすれば、ロシア軍にとっては悪夢のはじまりかもしれません。

ウクライナ軍資料映像
(Credit: 7th Army Training Command, Openverse)

 戦況にかんしてタイムズはきわめて慎重なので、読者が過剰な期待を抱かないように報道している。しかしそういうニュースを載せたのは、潮目が変わりつつあるのだろうと思いながら読んでいます。
(2022年3月17日)