世論が持つか

 ウクライナ戦争は膠着状態に陥り、戦争は長期化する。
 アメリカの国家情報長官が議会でこう証言しました(May 10, 2022, The Washington Post)。
 証言したのはCIAや米軍情報部など、アメリカの情報機関を統括する政権トップ、A・ヘインズ長官です。

 長官はアメリカ議会上院の軍事委員会で、ウクライナの戦線は膠着状態に陥り、プーチン大統領は長期戦の構えだと証言しました。ロシア軍は、これから1,2か月後にはキーウから撤退した部隊を再編成し東部戦線に投入するだろうから、その時点で戦争は「見通しがつかず、予想できないエスカレーションに」向かう恐れもあるといっています。

ヘインズ米国家情報長官
(情報長官室 Facebook から)

 もっとも注目されたのは、次の一節でしょう。
「(プーチン大統領は)たぶんこれから先、食糧不足やインフレ、エネルギー事情の悪化で、アメリカとEUの結束が弱まると見ている」
 戦争が長引けば、アメリカもEUもそのうちに自分が困るだろうというのです。ロシアに前例のない厳しい経済制裁を課したり、猛烈な勢いで武器援助をしているけれど、そんなものが長つづきするわけはない。世論が持たない、といっているのです。

 このニュースを読んで、なるほどなと思いました。
 同時に、大して新味がないとも思います。この程度のことはこれまでの報道を見ていればだいたい見当がつく。わざわざいわれなくてもいい、と。
 しかしこれが「情報長官」の「議会証言」だというところにぼくは注目します。
 これで、これまでの報道がだいたい戦争の大局をつかんでいたと確認できるので。

ゼレンスキー大統領 Facebook から(4月5日)

 ウクライナ戦争が起きたとき、コロナとおなじく世界的な大変動になるなと思いました。その時点から、ぼくは日本のメディアをあまり見ていません。日本のメディアも頼りになり役に立つことはあるけれど、こういうときはアメリカ、イギリスのメディアの方が「たしかだ」という感覚があるからです。現場感、現実感があるといってもいいでしょうか。

 その現場感、現実感も、どこかずれているかもしれない。それはつねに疑った方がいい。けれど、それほどずれてはいない、たぶん「たしかだ」と推測できるのは、アメリカとイギリスの情報機関の見方に裏打ちされたときです。
 いま、だいたい戦争はこんなところに来ているのだなと、10日のポスト紙、ニューヨーク・タイムズとBBCをみてわかった気になりました。
(2022年5月11日)