五輪とは何なのか

 来年、パリで開かれるオリンピックは“ウクライナ抜き”になるかもしれない。
 ロシアの選手は参加するけれど、ウクライナの選手は戦場に向かう。IOCはそんなのどうでもいいとオリンピックを強行し、莫大な利益を上げる。こういった展開になるかもしれません(Ukraine war: Russian athletes cannot be allowed at Olympics, Zelensky says. Jan. 29, 2023, BBC)。

 2024年にパリで開かれるオリンピックは、これまでロシアとベラルーシの参加が危ぶまれていました。IOC、国際オリンピック委員会が去年、ロシアのウクライナ侵攻を批判し、ロシアの選手たちは国際スポーツの場から除外されるべきだとの立場をとったからです。
 ところがIOCのバッハ会長は先月になって、一人ひとりの選手は政府が何をしたかで処罰されるべきではないと、戦争とスポーツを切り離す考えを示唆しました。これを受けてIOCは先週、ロシアとベラルーシの選手が「中立の立場」で参加できる方法を検討するといっています。プーチン大統領が何をしようが、ロシアの選手に罪はないというのでしょう。

 ウクライナは激しく反発しています。
 戦争がつづいているかぎり、ロシアとベラルーシの選手は国際競技に出ることはできないとスポーツ大臣はいいます。
「われわれの声が聞かれないのであれば、オリンピックのボイコットも辞さない」
 ゼレンスキー大統領も定例の演説で、IOCがロシアの選手の参加を認めるなら、IOCはテロを認めたのとおなじことになるといいます。
「選手たちが戦場で死んでいるときに、中立の立場なんてありえない」

 おそらくIOCは、戦争はすぐ終わると思ったのでしょう。去年はとりあえず侵略戦争に反対すると発表した。でもロシア抜きでは完全なオリンピックにならない。やっぱりできるだけ多くの国を参加させたいと考え、ロシア選手に参加への道を開いたのでしょう。その裏には当然、巨額の収入を維持したいという計算があったはずです。いや計算が先にあって、理屈は後からついてきたのか。なにしろIOCはカネの組織だから。

ゼレンスキー大統領

 ゼレンスキー大統領は指摘しています。ナチスのプロパガンダに貢献した1936年のベルリン・オリンピックは、オリンピック史上の大きな誤りだったと。
「オリンピック運動とテロリスト国家は、合流するようなことがあってはならない」
 いまのIOCのもとでは、ウクライナはボイコットするしかないかもしれません。

 オリンピックと政治の問題をほんとに真剣に考えるなら、「国」という枠をなくすしかない。選手は全員個人として参加する。それが本来のオリンピック精神ではないかと思うのですが。
(2023年1月31日)