代替肉の代替品

 大豆ミートなどの代替肉の伸びが落ちました。撤退するメーカーも出てきたらしい。
 代替肉は気候変動への重要な対策のひとつだのに、残念です(Alt-meat fever has cooled. Here’s why. November 12, 2022, The Washington Post)。

 大豆などの植物タンパクでできる代替肉は3年前にブームとなり、タイソン・フーズやネスレなどの食品大手も参入する新産業となりました。ベジタリアンやフレキシタリアンなど、肉をまったく食べないとか、控えるという人が増えたこともブーム到来を促しました。
 それが、しぼんでしまった。
 去年の代替肉の売上は、前年比10%減。代替肉メーカー、ビヨンド・ミート社の株はピーク時から80%下落、先月は従業員19%の解雇を発表しました。象徴的なのはマクドナルドです。植物肉の「マックプラント・バーガー」を売り出す予定が、いつのまにか消えました。

 ぼくも何度か「大豆ミート」を買ったことがあります。安いとかうまいとかではなく、牛肉はできるだけ控えたいと思って。牛肉を食べれば食べるほど、地球環境は破壊され、温暖化は進む。そんな動きにはできれば巻きこまれたくない。でも、大豆ミートしか食べないというほど強い意志を持っていたわけでもありませんでした。代替肉を買う人の多くが、ぼくと似たようなもんだったんじゃないでしょうか。
 どうなるのかなと思っていたら、別の動きが出てきました。
 代替肉ではなく、「培養肉」が実用化されるというのです。

培養肉のチキン (iStock)

 培養肉は、牛や鶏の細胞を工場で大規模に培養し、肉の形に成形したものです。
 動物の細胞からできているので、味、食感、栄養とも本物そっくり。細胞培養だから動物を殺さずにすむし、地球環境の破壊も少ない。それをこのほどアメリカのFDA、食品医薬品局が認可しました。
 認可されたのはいまのところカリフォルニアのメーカーのチキンだけですが、いずれ認可枠は広がるでしょう。代替肉に代わって培養肉がブームになるかもしれない。すでに数十ものメーカーが開発に動き出しているとか。

 エジプトで開かれている国連の気候会議COP27でも、牛肉生産をどう抑えるかが主なテーマでした。培養肉はその有力な対策とされ、会場では試食会も開かれたそうです。
 とはいえ代替肉にしろ培養肉にしろ、ぼくらが「肉を食べる」ことにこだわりつづけるかぎり、問題はなくならない。肉の代わりをつくるのではなく、肉そのものから離れることじゃないか。いっそ江戸時代のように、肉とは無縁の暮らしに回帰すべきかもしれないと、そんな思いも頭をかすめます。
(2022年11月22日)