修理権の実現

 スマホが自分で修理できるようになりました。
 アップルのアイフォン iPhone です。このなかの SE というシリーズはバッテリー交換などが自分でできるようになったと、ワシントン・ポストが伝えました。消費者運動の観点からは画期的な出来事です(What you need to know about Apple’s new DIY iPhone repair program. April 28, 2022, The Washington Post)。

 アップルがスマホの修理体制を拡大すると発表したのは、4月27日です。
「お客様の使うデバイスが、もし修理が必要になったときは安全に、安心して、かつ信頼できる方法で修理できるようにすることが、お客様と環境に対する責務と信じます」
 今後ユーザーは、スマホの画面が傷ついたとかバッテリーを交換するといった保守・修理作業を、かなりの程度まで自分でできるようになります。
 そうするのが「環境への責務」でもあるとアップルはいうのですね。

 具体的には、ユーザーはアップルが公表する“修理マニュアル”を読み、自分でできるかどうかを判断します。できると思ったら必要な部品、たとえば液晶画面の保護ガラスやバッテリーを発注する。それを使って、修理マニュアルを参照しながら自分で直せばいい。修理部品は200種類もあり、ユーザーは従来「正規代理店」が手にしていたのとおなじ価格でこれら部品を買うことができます。

 次から次へと新製品が出るスマホ。でもどのメーカーのものも、ユーザーは自分で修理することができません。修理が禁止されているか、かりに正規代理店に頼める場合でもきわめて高くつくからです。


 バッテリーが使えなくなっても液晶画面にヒビが入っても、そこだけ直すことはできずスマホ全体を買い換えなければならない。逆にいえばメーカーはそうしてどんどん古いものを使えなくして新型モデルを売り込み、巨額の利益をあげてきました。

 それ、おかしいじゃないかと声を上げたのはヨーロッパとアメリカのユーザーです。
 スマホだけではなく、パソコンもプリンターも家電製品も、ますます多くの工業製品が「修理させず、新型を買わせる」販売戦略を取っている。消費者をばかにしているし資源の無駄だと抗議の声が強まりました。そういう「修理権」の市民運動を、このブログでも紹介しています(2021年7月7日,23日)。

 消費者の怒りの声に押され、ようやくアップルが路線を転換したということでしょう。
 残念ながらその修理プログラム、当面はアップルだけ、しかもアメリカでしか実施されません。
 日本の消費者は当分、メーカーと代理店になめられたままなんじゃないかな。
(2022年5月5日)