列車で行こう

 近距離の旅行には、飛行機でなく列車を使うこと。
 こんな法律がフランスで施行されました。いわずと知れた温暖化対策です。飛行機の旅行は列車にくらべてだんぜん炭素排出量が多い。ことに近距離便はひどいから、法律で禁止しようというわけです(France bans short-haul flights to cut carbon emissions. 24 May 2023. BBC)。

 23日から施行された法律では、パリからリヨンやボルドーといった幾つかの都市への便が廃止になりました。そんな近いところには列車で行け、ということです。
 たしかに列車にくらべて飛行機は燃料を食う。ある消費者団体によれば、短距離の飛行便は乗客ひとりあたりの炭素排出量が鉄道の77倍にもなるとか。いまや飛行機に乗らない、可能なかぎり列車を使うというのは先進国で暮らす市民の良識になったといえるでしょう。

 フライトシェイム、飛ぶ恥という英語もある。その元となったスウェーデン語の「フリーグスカム」と、「1年間、飛行機に乗らない運動」についてはこのブログでも紹介しました(2023年2月14日)。一律に禁止したり制限するのは無理でしょうが、ヨーロッパのように代わりになる交通手段、鉄道が発達しているところでなら、こうした動きはさらに広がるでしょう。

 とはいえ、抵抗も強い。
 2年前にフランスで短距離便の廃止が提案された当時は、「列車で4時間以内に行ける都市への航空便」が対象でした。でも航空業界の強い反対で2時間半に縮小されています。なかにはすでに事実上廃止になっていた路線もあるから、新法が施行されたからといって大幅な炭素削減ができるわけではない。むしろ象徴的な措置にすぎないとも批判されている。

(Credit: Next generation photo, Openverse)

 ぼくは10年前だったらヨーロッパのこういう動きを、やりすぎじゃないかと距離をおいて見たと思います。いまはだいぶ受け止め方が変わりました。
 時代の流れというものでしょう。
 やむをえないというより、もうちょっと先の、自分にできることがあればしたいという気分になっています。飛行機に乗らないわけにはいかないけれど、新幹線があるならそっちにしよう、次に北海道に行くときはフェリーがいいかな、などとも思います。

 いってみれば選挙みたいなものでしょうか。
 投票してもしなくても、何も変わらない。でも投票しなかったらちょっとうしろめたい。
 気候危機もまた、ぼくが何をしてもしなくても変わりはしない。でも何もしないのはちょっとうしろめたい。だからときどき、いろいろなことを考えるようにしています。
(2023年5月26日)