簡素に3年目

 21日土曜日、浦河ひがし町診療所の田植えが行われました。
 米づくりは、診療所が開設された翌年にはじまりました。ことしで8年目になります。
 以前は地域の幼稚園や小学校に声をかけ、たくさんの子どもが参加したのですが、ことしはコロナのせいでお祭りのようなことはできなくなりました。3年つづきの、簡素をむねとした行事です。

 朝9時前、担当者が到着してみると田んぼの水が減っていました。どうしてそうなったかよくわからないのですが、例年とちがってやや硬めの泥での田植えです。植えた苗が水の上に浮いてこないのはいいけれど、泥が固めだと場所によっては植え付けるのにちょっと手間がかかります。

 診療所のデイケアが中心になり、あちこちから来た若干の応援部隊を含め、田んぼのなかに入ったのは20数名でした。それも出たり入ったり、休みながらの作業です。

 去年は3時間ほどで終わったのが、ことしはあいだで昼食を取りながら4時間あまりかかりました。
 時間がかかったのは実働部隊が少なかったせいでしょう。高齢グループの何人かが、泥のなかに入るのをやめたことも響いています。
 泥には入らないけれど、田植えには参加したいということで、田んぼのまわりに陣取る高みの見物客が増えました。役者が少ないのに「ギャラリーが多くてうるさい」と、苗を植える人からは冗談も飛んでいます。

 ことしの田植えにいろどりを添えたのは、たこ焼きでしょう。田んぼの脇に、関西風の“本物のたこ焼き”が登場したのです。「たこ焼きのもと」でつくるのではない、セミプロが道具をそろえて粉からつくる本格派。もちろん容器は発泡スチロールなんかではなく、舟型の経木でできています。削り節がたっぷりかかっていました。

 ふんわりふっくら、熱々をふーふーしながらいただきます。

 田植えをどんなふうにするか、しばらく前に診療所で若干の議論がありました。
 コロナも最悪の時期は過ぎたことだし、屋外の行事だから感染リスクは低い。少し参加者が増えてもいいから、地域の子どもたちに声をかけようと。
 そうならなかったのは、感染より地域の声が怖いからでした。たくさん人が集まったら、コロナの最中に診療所は何をしているんだといわれかねない。ここは自重しておこうという判断です。
 患者を守るときには無理をする、でもこういうときには地域に合わせます。
(2022年5月21日)