米情報の威力

 ウクライナ戦争はもう新聞の一面に載りません。
 でもさまざまな変化が起きています。なかでも重要なのは、アメリカの「情報」がこの戦争で決定的な役割をはたしているということでしょう。それが先週来の報道であきらかになりました。

 最初のスクープはニューヨーク・タイムズです。
 5月4日、ウクライナ戦争ではロシア軍の将軍が多数死亡しているが、それはアメリカ情報機関の情報が使われているからだと報じました(U.S. Intelligence Is Helping Ukraine Kill Russian Generals, Officials Say. May 4, 2022, The New York Times)。

 ウクライナ戦争で、ロシア軍はこれまでに7千人から1万5千人もの戦死者を出しています。この大損害に加えて専門家を驚かせているのは、複数の将軍が戦死していることです。ウクライナ軍の発表では12名、なぜこうも多くの将軍が戦死するのか、ずっと疑問とされてきました。
 その背景があきらかになったのです。ウクライナ軍に対して、アメリカのCIAや米軍情報部などがリアルタイムで情報提供をつづけている、それをもとにウクライナ軍はロシアの部隊や司令部を砲撃している。これが「将軍たちの死亡」に寄与しているということでした。

 アメリカが軍事情報をウクライナに提供しているのは周知の事実です。でもそこまで緊密な連携が行われているのかと、記事を読んで驚きました。

 この翌日の5月4日、ワシントン・ポストが別のスクープを載せています。
 4月13日、ロシアの誘導ミサイル艦「モスクワ」がウクライナの対艦ミサイルに撃沈されたけれど、ここにもアメリカ情報機関が関与していました。アメリカの情報支援で、ウクライナが黒海艦隊の旗艦を撃沈する大戦果をあげたのです(U.S. provided intelligence that helped Ukraine sink Russian warship. May 5, 2022. The Washington Post)。

 こうしたことからわかるのは、ウクライナの抵抗を支えているのは西側の武器援助だけではない、アメリカの高度な情報の収集力とその提供でもあるということです。

 タイムズやポスト紙の報道を受け、バイデン大統領はあわてて国家情報長官やCIA、米軍のトップに電話したそうです。こんなふうに機密情報の使われ方がバレると、ウクライナ防衛にとってはマイナスだと。

 新聞が報じた程度のことはロシアの情報機関だってとっくに知っているはずだから、大統領があわてたのは形だけのことでしょうけれど。
(2022年5月12日)