自立のための核

 韓国では、国民の71%が核武装を望んでいる。
 こんな世論調査を伝える記事がありました。ウクライナ戦争がはじまる直前です(South Koreans overwhelmingly want nuclear weapons to confront China and North Korea, poll finds. February 21, 2022, The Washington Post)。

 国際問題を研究するシンク・タンク、CCGA(Chicago Council on Global Affairs)が行った調査でした。
 71%というのは、予想外に高い数字です。しかも調査を分析したCCGAの専門家は、これが一時的なものではなく、感情的な反応でもないと分析しています。韓国人の圧倒的多数は、かりにアメリカが反対し、制裁を受けることがあっても、自分たちは核開発を進めるべきだと考えているようです。

 北朝鮮の核も大きな要因ですが、意外なことに多くの韓国人は北朝鮮よりむしろその向こうの核大国、中国を意識している。中国の脅威に対抗するために、核が必要と考えていることが調査から明らかです。
 そんな無理なことはせず、有事にはアメリカ軍に守ってもらえばいい、北の核にはアメリカの核が対抗してくれると、ぼくなどは思ってしまいますが、韓国の人はそうは考えない。アメリカとの同盟による安全保障体制は維持するけれど、やっぱり自前の核が必要だと考えている。しかもその考えはこの10年で強まり、さらに多数派になっているといいます。

 この調査結果について、元韓国軍にいたコンサルタントのポール・チョイさんは、韓国民は自分たちを取り巻く状況が複雑で流動的だと十分にわかった上で、核を求めているといいます。
「私は韓国人として、こういうことはとっくに議論していなければならなかったと思う。われわれはすべての選択肢を見きわめたうえで、安全保障にとって何がもっとも効果的なのかを決めなければならない」

 この記事が出てから、ウクライナ戦争がはじまりました。
 核をちらつかせ、弱小国を力で踏みにじる大国を見ながら、そしてロシア軍の無法ぶりを見ながら、韓国の人はさらに核への思いを固めていると、4月6日付のニューヨーク・タイムズも伝えています。

 そういう韓国は、日本からはずいぶん遠く離れていったと思います。
 やむをえない、日本は独自の道を歩めばいいといいたいけれど、不安ですね。ぼくらは考えてそうしているわけではなく、何も考えずにそうなっているだけではないかと。
(2022年4月7日)