評価の評価

 ウクライナ戦争は停滞、アメリカの分析が問われている。
 こういう記事がワシントン・ポストに載りました。勇気ある「異論」です。
 アメリカの軍事援助がつづけばウクライナの戦局は好転するという楽観論に、この異論が水をかけています。戦況の分析と評価はどこまでできているのか、肝心なところでまちがってはいないか。自戒の念をこめて読みました(As Ukraine war bogs down, U.S. assessments face scrutiny. By Dan Lamothe and Karoun Demirjian. July 2, 2022, The Washington Post)。
 安全保障と国防総省担当の2人の記者が伝えるポイントは、以下のようなものです。

・専門家、国会議員のあいだで戦争の評価は分かれている。
・西側の支援でウクライナは勝てるという人がいるが、米政府はバラ色にすぎる見通しを描いてはいないか。
・ペンタゴンは去年、アフガニスタン政権の急激な崩壊を予測できなかった。いまどこまでウクライナの状況を把握できているだろう。
・保守系シンクタンクの専門家は、ウクライナ軍が「曲がり角」にいる状況をペンタゴンが認めようとしないのは、ウクライナのためにならないし倫理的にも問題だと批判する。

・別の専門家は、ウクライナがロシア軍をすべて領土外に撃退するのはもはや不可能で、外交解決を働きかけるべきだという。
・イラクやアフガニスタンでの戦争とちがって、今回米政府は驚くほど情報を開示したが、ペンタゴンがどこまで真相を把握しているか、国民にその真相をもとに説明しているか疑問とする声が議会にはある。
・現実は、ロシア軍がウクライナ軍をゆっくり押しつぶしているということではないのか。
・ウクライナはここまでがんばったのだから、いまの時点で「勝った」といっていい。外交を進めるべきだという意見が、民主党左派議員のなかからは聞かれる。

 さまざまな声があるけれど、深刻な意見の対立を示しているわけではありません。戦況はどこまで把握できているかという疑問と、いつ、どのように和平交渉を進めるかのちがいでしょう。アメリカは最新兵器の部分的な成功を強調しているのではないか、という冷徹な観察もあります。

 ぼく自身、この戦争はウクライナに勝ってほしいと思うから、どうしても自分に都合のいい情報を拾い読みしてきました。それじゃいけませんと、釘を刺されたようです。
 ウクライナの人びとは、少なくともいまの時点で和平に応じる気配はない。その気配が流動化しはじめるのは、秋になってからということでしょうか。
(2022年7月4日)