踊り場のウクライナ

 先週末、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズの2つの記事が目を引きました。
 ウクライナがどうなっているか、週末にじっくり読んでくださいと出てきたものでしょう。

 ポスト紙の見出しは、「ロシアの戦闘能力は尽きかけている」(リズ・スライ記者。Russia will soon exhaust its combat capabilities, Western assessments predict. By Liz Sly, June 25)。
 タイムズ紙は、「特殊部隊ネットワークが武器供給を支える」(エリック・シュミットら3記者。Commando Network Coordinates Flow of Weapons in Ukraine, Officials Say. By Eric Schmitt, Julian E. Barnes and Helene Cooper, June 25)。
 いずれも米国防総省や西側の情報機関が情報源です。

(Credit: The U.S. Army, Openverse)

「ロシア軍はやがて戦闘能力を使い果たし、ドンバス地域での前進を止めざるをえなくなるだろう」というのがポスト紙の記事。“西側の高官”が語ったことになっています。
 ロシア軍は先週、激戦の末に東部のセベロドネツクを制圧したが、相当な戦死者を出し武器弾薬を消耗している。これ以上の前進はむずかしい。イギリスのジョンソン首相はロシア軍がこのような激しい消耗戦をつづけられるのはあと数か月だという。

 スライ記者は開戦前からの両軍の弾薬の備蓄をさまざまに分析し、ロシアはいまのような弾薬の消耗をつづけるだけの生産能力がないという推定を伝えています。
 一方ウクライナはもともと弾薬が乏しく劣勢だけれど、西側から最新鋭の武器弾薬が届きはじめている。数週間後には消耗戦の力学が変わるだろうといっています。
 大きく見れば、戦争は踊り場にさしかかったということでしょうか。以前、この夏には「定常状態」になるといっていた専門家のことばを思い出します。

南部前線を視察するゼレンスキー大統領
(6月18日、大統領府写真)

 一方タイムズは、西側諸国の特殊部隊がウクライナ国内に入りこんでいるという、衝撃的な事実を伝えています。
 アメリカだけでなく、イギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊がウクライナの特殊部隊と連携して活動している。といっても実際の戦闘に従事しているわけではない。ロシアにわからないよう武器弾薬を密かに輸送する手配や、新兵器を扱うウクライナ兵の訓練を行っているらしい。とはいえ、西側の軍隊がウクライナ国内で任務に従事していることに変わりはなく、ロシアにしてみれば明白な敵対行為でしょう。
 極秘作戦がタイムズ報道で表面化した形です。

 でも見方によっては、これは誰かがタイムズに報道「させた」のでしょう。西側はここまで真剣だ、連帯は強いとプーチンに伝えるために。効果があるかどうかはわからないけれど。
(2022年6月27日)