電気も地産地消

 全国の駐車場を、太陽光パネルの屋根を覆ってしまおう。
 こんな動きがフランスではじまっています。市民運動ではなく、国の政策として。すでにそのための法律もできました。
 駐車場発電、おもしろいアイデアです。フランスとおなじように土地が狭い日本も、まねしたらどうでしょうか(New French law will blanket parking lots with solar panels. February 6, 2023. The Washington Post)。

 新しくできた「再生可能エネルギー生産促進法」は、マクロン大統領の温暖化対策の柱です。この法律によって、フランスではことし7月から野外の大型駐車場はすべて、太陽光パネルの屋根を作ることが義務化されました。対象となるのは広さ1500平方メートル以上の駐車場で、一般的な乗用車だと50から60台分以上。こうした駐車場は面積の半分以上を太陽光パネルで覆う必要があります。
 駐車場発電が全国ではじまれば、最高11ギガワット、原発10基分の電力がまかなえるといいます。

 フランスは57基の原発を持ち、全発電量の70%を原発でまかなっている原発大国。でもそのおかげで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは出遅れました。マクロン政権はEUの目標にとどくためにも、再生可能エネルギーに取り組まなければならない。駐車場発電はその一環でしょう。
 そこにはまた、太陽光発電のコストはどんどん下がっているのに、原発のコストはどんどん上がっているという現実がある。長期的なエネルギー戦略を考えれば太陽光や風力を重視しなければならないとの判断があったでしょう。新しい法律は、駐車場だけでなく高速道路の側道などでも再生エネルギー発電がしやすくなるよう、さまざまな規定が盛りこまれている。
 こういう動きがどうして日本では出てこないんだろうか。

 駐車場発電はエネルギーの専門家から見ればマイナーな話かもしれません。でもぼくは住民の自立という、より大きな視点からはとても意義深い動きだと思います。
 それはエネルギーも食料とおなじく、もっと地産地消を考えるべきだから。
 原発のような巨大な設備で広大な地域をカバーするのは中央集権。独占企業の電力会社と国の力が強まるだけです。中央集権がいかに災害に弱いかは、5年前の北海道胆振東部地震でも証明されました。
 集中型より分散型へ。原発より駐車場発電。
 地域に、身の回りに無数に散在する再生エネルギー。
 それは電気もぼくら自身で作るという気概につながるのではないでしょうか。
(2023年2月8日)