ひがし町診療所の新しいグループホームが完成し、日曜日に引き渡しが行われました。
建設会社の担当者や診療所関係者、それにもちろんここに入居する予定の5人のメンバーもやって来ました。
木の香も新しいグループホームは2階建て、1階に広いキッチンとリビング、世話人の事務所、ロフト付きのアトリエと居室がひとつ。2階は4名分の居室があります。診療所にはこれまで女性専用のグループホームが2棟ありましたが、初の男性専用棟です。


もちろん全館床暖房。キッチンも最新のシンク、広い収納に食洗器も。
「いいなあ、こんな家に住みたい」
見学に来た人の誰もが、ため息をもらしていました。

メンバーのひとり、柳一茂さんが遠くを見るような目つきでいいます。
「いやあ、きのうも仲間と話したんです。浦河に来て20年、もうちょっとしたら20年になるけど、よくがんばったって。やっとここまできた、って」
幻覚妄想に振りまわされ、いまでも調子悪くなることがあるけれど、病気とともに一生懸命生きてきた。暮らし方を身につけてきた。その苦労はむだじゃなかったという感慨でしょう。

「20年前にこんな家、ありえなかったですよ」
診療所の精神科医、川村敏明先生が浦河にやってきたころ、メンバーは多くが崩れ落ちそうな家に住んでいました。それからなんと多くの日が過ぎ去ったことか。治療ではなく暮らし、それがもうひとつの形となりました。

グループホームの概念を超えたこの建物は、医療や福祉、障害者の暮らしはこうであることもできるという、別の方向を示しています。
だからここは、たんに5人のメンバーが住む場所ではなくなるでしょう。仲間やスタッフが訪れ、ミーティングや食事会、いろいろなイベントも開かれる。そういうことがないときも、診療所の、地域の人びとが集まり憩う場所、みんなの居場所になる。
浦河って、いいとこだぞ。
住む人だけでなく、訪れる人もそういえる。このグループホームはそのためのひとつのしくみになります。そうなるための「思い」がこめられています。
(2020年12月21日)