気持を話す

 1枚の紙に、さまざまな顔のイラストがあります。
「ひねくれた気分」「ハッピー」「ホッとした気分」などの説明がついて。
 浦河のあちこちで、よく見かける紙です。
 それを見ながら、ミーティングの参加者は考えます。自分のいまの気分はこのなかのどの顔だろう。きょうは、この1週間は、どんな気分だったか。
 ひがし町診療所デイケアの「気持ちミーティング」です。

「心配」とひとりがいいます。引越しをするのに何をどうすればいいかわからない。でも新しいところに行くと思うと、「わくわく」もある。
「はずかしい」。こんなミーティングに出たことがないから。
 そういうメンバーには司会役の泉祐志ワーカーが助け舟を出します。
 そうだよね、こういうとこじゃ自分から声を出すって、しにくいよね。でも自分の気持ちがちゃんといえてました。
 パチパチパチ、拍手がつづきます。

「イライラする」もありました。
 映画の主人公がむかしの彼女なんです、それ、町の映画館のポスターで見て腹が立って。おれ捨ててこんなことしてる。
 そういいながら彼は身体を揺らして苦笑していました。
 イライラのあとの、もの悲しさが伝わります。
 ミーティングの場は大笑いでした。
 誰も、それ妄想だなんていわない。

 こんなふうに、順番に自分の気持ちを話してゆく。気持ちミーティングは、いってみればそれだけのことです。気持ちを批判しあうとか、深く分析するわけではない。ただしゃべる。
 デイケアにやってくるメンバーは、自分をしゃべる練習をつづけます。
 どうしてかはわからないけれど、ぼくにはこれがときどき祈りの場であるように見えるときがあります。
(2020年12月26日)