養殖の暗黒

 養殖を、見直さなければ。
 養殖のサーモンやエビは、安くてきれいで安全と思っていたら、その裏には闇の世界が広がっている。気になる長文の特集記事がありました(The Dirty Secret Behind the Farmed Fish You Eat. By Ian Urbina. Oct. 8, 2026. The New York Times)。

 特集は、養殖の背後には劣悪で危険な労働環境、海洋資源の枯渇や汚染があるといいます。
 ぼくらはきれいにパックされたサーモンの切り身を見ながら、それがどうやって食卓にのぼるかを知らない。養殖サーモンは清潔で安全だけれど、それができるまでの過程に、ぼくらには見えない闇が広がっています。

海上の養殖場(資料映像)

 いちばんの問題は、養殖を支えるサプライ・チェーンにあるらしい。
 養殖魚のエサとなる「フィッシュミール」は、イワシやキビナゴ類のような小魚が原料になります。大量の養殖魚を育てるためには、さらに大量のフィッシュミールがいる。フィッシュミールの原料を求め、世界の海には1万隻もの漁船が展開し小魚を乱獲しています。
 多くは違法操業で、アフリカ沖では船員が1日15時間、奴隷のように働いている。落水や事故でも補償はない。少数民族が強制労働させられている例もあるらしい。
 乱獲は資源の枯渇だけでなく、漁民文化を破壊します。サカナのとれなくなった住民が、ヨーロッパに向かう違法移民にもなっている。

フィッシュミールの粉末(Credit: Phu Thinh Co, Openverse)

 過酷な労働でとられた小魚は、世界1400か所の工場で加工されます。
 工程は劣悪で、南米の工場では腐ったサカナの有毒ガスで作業員2名が死亡する事故が起きました。インドではフィッシュミール工場の悪臭に地元民が抗議し、立ち退きをめぐって暴力事件も起きている。

 こうした闇でできるフィッシュミールだけれど、それを食べて大きくなった養殖魚は、安全できれいな優良食品としてスーパーに並びます。
 国連は2035年までに世界で消費される魚介の3分の2が養殖になると予測する。それとともに、闇はさらに広がるでしょう。

 ぼくはこれまで漠然と、養殖は天然資源を守ると思っていました。でもまちがいだった。養殖産業の増大は、自然と人間の過剰な略奪と破壊につながります。
 漁業も、農業とおなじように「工業化」「グローバル化」で一変してしまう。徹底した資本の論理が環境を、地球を、人間を収奪する。未来を奪う。
 そんなことに手を貸したくはない。でも、どうすればいいのだろう。
 いずれはヴィーガンになるしかないのだろうか、ぼくらは。
(2026年10月12日)